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育成年代のメディカルについて 2

2011年07月24日

『育成年代のメディカルについて2』~JFAアカデミーの取り組み~

目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』
 
 
第二回『セルフチェック』

痛みがあっても我慢してプレーし、いよいよ痛みが強くなって、病院を受診した際には重症化してしまっている、
というケースは珍しくありません。痛みを我慢する強い精神力を持つことも大切ですが、一旦練習が終われば、
医学的観点から考慮し、ドクターの診断を受け、翌日以降の練習内容の調整が必要かどうか判断すべきです。
 
 

 
前回お話した、『早期発見・早期安静』それを実現するためには、日常的に選手自身が自分のささいな変化に気づく
ということが重要です。今回はアカデミーで行っているセルフチェックを紹介します。
 

 
セルフチェックは、練習後『自分の身体は今どんな状態だろうか』と自問するところから始まります。
・いつもより、ももの裏の筋肉が疲労している。
・オスグットのところが痛い。
などなど、その日の自分の状態を確認します。異変に対して≪原因を探り解決策を考える≫自問自答を行う自覚を
持つことが大切です。
 
例えば…
 
状況把握『練習後の体重の減り具合が激しいぞ』
原因究明『今日は暑かったから汗でたくさん水分を失ったかもしれないな』
解決策実践『練習後にいつもより多めに水分を補給しよう』
という流れを、選手たち自身で作り出すことが重要です。
 
 
この場合、練習後のこまめな水分補給を義務化したり、スタッフが水を飲むように言うことは簡単ですが、選手自身が
必要性を感じ、自らの意思で実践するということをこの年代で身につけてほしいと思っています。
 
このような思いから、選手自身が原因や解決策が自分で考えてもわからない時に初めてスタッフはアドバイスをする
ようにしています。
 
 

 
セルフチェックのポイントを生徒たちが整理しやすいよう、アカデミーでは以下のことを実践しています。
 
 

①毎日の体重の記録
ただ計るだけでは意味がありません。
(夏場で汗の量が多い)・(別メニュー中で運動量が少ない)など、その時の状況と、体重の変化を照らし合わせて、
水分補給をこまめにとる、間食を減らすなど、どんな対応が必要かを考えることが重要です。
 
②コンディションチェックシート
名前体調筋疲労ケガ
 

  
練習後・就寝までの間に、体調・筋疲労・ケガについて自分で考え、異変があれば状況を記載します。
異変を敏感に感知し、寒気がすれば温かくして寝る、ふくらはぎの筋疲労が強ければ、ふくらはぎのストレッチを
多めにするなど、対応策をとる習慣をつけます。
 
 
 
ケガは、特別に痛みがあるかどうか感じて、痛みがあれば記入し、トレーナーに相談します。
 
 

 
また、この年代に特に注意が必要な、オスグット・腰椎分離症は特別に、日常的にセルフチェックを行うよう指導して
います。
 
③帰寮時のコンディションチェック
毎週帰寮時にトレーナーによるコンディションチェックを行います。筋肉の固さのチェックや、ケガの状態の確認を行い、
自分自身の身体がどういう状態にあるのかを選手に理解させるためのサポートを行っています。
これはトレーナーがテーピングをしてあげたり、マッサージやストレッチをしてあげたりするというものではありません。
選手自身が自分の身体の状態を感じることが前提であり、トレーナーは選手の身体が今どんな状態で、どんな対応を
すべきかを理解させるためのサポートを行います。
 

 
ケガを早期発見するためには、選手自身で行うセルフチェックが非常に重要です。また、このセルフチェックを行い、
必要なコンディショニングを実践することができれば、ケガの原因を未然に摘みとることにもなります。
 

 
そして、何より重要なのは、セルフチェック→セルフコンディショニングの流れをしっかり行うことで、明日100%の力を
出し切って、良い練習ができるということです。
何の問題もなく、練習が行われているということは、一見当たり前のことのように感じますが、日々の小さな努力が
あって、今日良いトレーニングが行えたということを生徒に自覚してほしいと思っています。
 
 

 
『練習で100%の力を出し切る』ことが継続できれば、トレーニングはより質の高いものになります。それは生徒たちのより良いプレーヤーになるという夢に近づくための大きな一歩です。
 

 
セルフチェックとは少し異なりますが、自分の成長の様子を客観的にとらえるため、アカデミーでは、以下のことを
実践しています。
 
①毎月の身長の記録
毎月身長を記録することで、急激に身体が成長している時期を自覚し、ケガの予防などの意識を高めます。
また下のグラフと見比べることで、自分の成長が、今どの段階に来ているのかを確認できるようにします。
 
6歳~現在までの1年間の伸長の推移の観察
 
各選手に対して成長のグラフを作成し、自分の成長がどの段階なのかを実感させています。成長の段階に応じて、
ケガを防ぎ、より効果的なトレーニングを実施するためには、コーディネーション・持久力・speed・パワーなどのトレー
ニングのバランスを変えなければなりません。アカデミーではW-upなどで、選手ごとに個別のトレーニングを実践して
います。
 

 
③年間の傷害の記録の検証
各学年、誰が・いつ・どんなケガ(外傷・障害・内科的疾患)をして、どれくらい休んだのか?という一覧表を作成し、
全生徒を集めて、昨年度末にディスカッションを行いました。
 

 
ディスカッションの中では、
「外傷より障害が多く、復帰までかかる日数も長い。」
「障害は日々の積み重ねで起こるので、ケアを積み重ねることで、長期離脱を防ぐことができる。」
「2月に体調不良者がとても多い。」
「寮内は感染しやすいし、流行する時期は各個人が手洗い・うがい・咳エチケットの自覚を高く持つことが必要」など、
建設的な意見が次々に飛び出しました。
中には「○○君は大腿四頭筋系のケガが多い。四頭筋のケアをしっかり行うことが重要」という個人的なアドバイスも
ありました。教科書上の知識を一方的に伝えるよりも、自分たちの経験を確認し合うことで、生徒たちは本質を理解
しやすくなっているように感じます。
 
 
また、季節や環境によって何に注意すべきかが変わってくる、ということも実際の経験を通して学ぶことができて
います。
 
 

 
また、宇城アカデミーでは新年度の選考試験が終わり、合格者確定後入校前にドクターによるメディカルチェックを
行い、傷害発症のリスクがある選手に対して注意を与える活動を行い、入校後の長期離脱を未然に防ぐ活動を
行っています。
 

(白石Dr.には定期的にアカデミーにお越しいただき、生徒の診察をしていただいています。)
 
全ての事が形式化されてしまっては何の意味も持ちません。得られた情報をもとに、どんな対応が必要なのかを考え、実践することが非常に重要です。
 

 
とは言っても、アカデミーでも失敗の連続です。セルフチェックを怠って、翌日の練習前、あるいは練習中になって
痛みの存在に気づき、症状を悪化させたり、練習ができなくなったり、という経験をした生徒も多くいます。 
練習後十分な水分補給を怠って、翌日脱水症状を訴えた選手もいます。
 

 
しかし、失敗を通して生徒たちは、本質を学んでいきます。スタッフは適切なタイミングでアドバイスを与えながらも、
あえて失敗の芽を摘まず、選手が本質を学び、自己管理のできる選手になって、アカデミーを卒業できるようサポート
しています。
 
では、実際にはどんなコンディショニングの方法があるのか、アカデミーで行っているコンディショニングの実際に
ついて、次回にお話します。

 

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