JFA.jp

JFA.jp

EN
ホーム > 選手育成 > 最新ニュース一覧 > [特集]ストライカー育成 まずはチャレンジさせてみよう! 影山雅永U-20日本代表監督×森山佳郎U-17日本代表監督 対談 後編

ニュース

[特集]ストライカー育成 まずはチャレンジさせてみよう! 影山雅永U-20日本代表監督×森山佳郎U-17日本代表監督 対談 後編

2021年10月05日

[特集]ストライカー育成 まずはチャレンジさせてみよう! 影山雅永U-20日本代表監督×森山佳郎U-17日本代表監督 対談 後編

年代別の日本代表を率いて世界と戦ってきた二人の指揮官は、ストライカーに必要な素養と、それを育む指導をどのように考えているのか。影山雅永U-20日本代表監督と森山佳郎U-17日本代表監督に話を聞いた。

○オンライン取材日:2021年6月18日
※本記事はJFAnews2021年7月に掲載されたものです

前編はこちら

――年代別ワールドカップでは、世界トップレベルのストライカーたちを目の当たりしてきたと思います。違いは感じましたか。

影山 臆する必要などないのですが、世界との差は認識しています。19年のU-20ワールドカップで大会得点王になったノルウェーのFW、エルリング・ブラウト・ホランド(現、ボルシア・ドルトムント)には、その1年前のリスボン国際トーナメントU18でその能力をまざまざと見せつけられました。あのとき、日本はノルウェーに引き分け以上で優勝することができたのですが、終始試合を支配しながらもハーランドの2発だけでやられたんです(●1-2)。われわれも「なんだ、この選手は!」と驚きました。試合後、ノルウェーの監督に聞くと、「彼は特別なストライカーなんだよ」と教えてくれました。本当にその言葉通りでした。ポルトガルのジョアン・フェリックス(現、アトレティコ・マドリード)もそうですが、年代別代表で対戦した選手たちが、現在、UEFAチャンピオンズリーグや各国の代表で活躍しています。日本の選手たちにとっては刺激になっています。「彼らはもう大舞台で活躍しているのに、俺たちはまだまだです」という声も聞きました。森山監督も同じようなことを選手から聞いていると思います。確か17年のU-17ワールドカップでイングランド代表と対戦したときは、フィル・フォーデン(現、マンチェスター・シティ)がいましたよね?

森山 フォーデンだけではなく、カラム・ハドソン=オドイ(現、チェルシー)もいました。2人とも既にトップの代表でプレーしています。当時、U-17日本代表でワールドカップに出場した菅原由勢(AZアルクマール)は、UEFAヨーロッパリーグでマンチェスター・ユナイテッドと対戦したときに、U-17イングランド代表で10番を背負っていたアンヘル・ゴメスと顔を合わせ、「あのときの日本の選手だな」と言われたそうです。鈴木冬一(ローザンヌ)、谷晃生(湘南ベルマーレ)らに聞いても、「17年のイングランド戦が、その後のキャリアにおいて自分の基準になっている」と話していました。年代別ワールドカップの経験は大きいですよ。実際に大会を終えた後、当時のメンバーたちは続々とJリーグでデビューしました。頭の中身がガラリと切り替わったのでしょうね。飛躍的な成長を遂げたと思います。

ゴールに迫るプレーを思い切りやらせてほしい

――世界大会での経験を経て、FWを育てる上で再検証した点はありますか。

森山 前を向くための準備、相手との駆け引きなど、学ぶべきことは多々ありますが、強調したいのは、ゴール前での強度の高いトレーニングを増やすことです。19年のU-17ワールドカップにおいて、日本はアタッキングサードに侵入した回数で全出場国のトップ4に入りながらも、ペナルティーエリア内のタッチ数は平均値を下回っていました。つまり、厳しいプレッシャーがかかるペナルティーエリアにはほとんど侵入させてもらえなかったのです。強豪相手には、なかなかシュートを打たせてもらえないのが実情ですし、ゴール前のチャンスは一瞬です。ワンタッチまたは相手をかわした次のタイミングで打つくらいのスピード感がないと難しい。ヨーロッパなどの列強を超えるには、国内の試合で世界基準の状況をどれだけつくれるかにかかっています。日本ではペナルティーエリアにすんなり侵入できているのに、世界に出た途端、相手の迫力に圧倒されてシュートを打てなくなるようでは、レベルアップしていきません。そのため、われわれは練習からシュートを打たせないための厳しい守備を徹底しているのです。

影山 世界を意識すれば、練習から高い強度を求めるのは当然のことです。日本が戦うのは海外のチームです。代表での活動の時間は限られていますが、そこはこだわっていきたい。日本国内でも厳しい守備の中でゴールを狙う姿勢を打ち出すことが必要だと考えます。

森山 以前、研修のためにスペインのバルセロナ、エスパニョール、ビルバオなどの練習を視察したとき、どのクラブのどの年代でも、自分たちと相手のゴールを近づけて少人数のシュートゲームをしていました。では、日本はどうか。そもそもゴール前のトレーニングは十分でしょうか。いま一度、考えたほうがいいかもしれません。

――最後に、全国の指導者へのメッセージを込めて、ストライカーを育てていく上で大切にしてもらいたいことは何ですか。

影山 繰り返しになりますが、ピッチでリスクを冒すことを許容していただきたい。特にゴールに迫っていくプレーを思い切りやらせてほしいですね。選手自身が「俺が決めてやるぞ」というメンタリティーを育んだとき、指導者がコーチングするチャンスがきます。日本代表のコーチングスタッフから聞いた話ですが、よくシュートを打つ久保建英選手(ヘタフェ)でさえ、大迫勇也選手(ブレーメン)と南野拓実選手(サウサンプトン)の積極的な姿勢を見て「僕なんかまだまだ」と自戒していたようです。大迫選手と南野選手は長年ヨーロッパでプレーし、習慣として体に染みついているのでしょうね。ゴール前では常にリスクを冒してチャレンジしていくのがサッカーなんだ、という指導をしていければ、選手はどんどん変わっていくと思います。

森山 リスクを冒した先にある得点の喜びをもっと感じることができる雰囲気をつくってもらいたいです。もちろん、その得点につながるラストパスを出した選手もいれば、その前に展開した選手もいる。さらにその先をたどれば、相手からボールを奪った選手もいます。ゴールから逆算してプレーすることを意識づけ、今以上にチーム全員でそのゴールに歓喜してほしいと思います。


森山佳郎U-17日本代表監督

関連情報
アーカイブ
JFAの理念

サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、
人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する。

JFAの理念・ビジョン・バリュー