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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第7回 三田智輝 ヨルダン女子トレセンコーチ

2015年07月09日

アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第7回 三田智輝 ヨルダン女子トレセンコーチ

アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第7回は、中東のヨルダンで女子トレセンコーチを務めている三田智輝氏のレポートです。

ヨルダンという国、そして女子サッカー

シリアでの人質事件以後、治安の心配はありましたが、市民生活は事件前と変わらず行われています。私が住むアンマン近郊の気候は温暖で森林高原が広がり、週末に家族でピクニックをして過ごす風景は騒乱が嘘のようです。「伝統料理は皆で一つの皿を分け合う」「一日5回のお祈りを共に行う」など集団の結束が重視される点は日本でいう「和」の文化に似ています。

ヨルダンにおける女子のスポーツの一番人気はサッカー。中でもステファニー・ナベル選手はカリスマ的存在です。「スポーツは女性が行うものではない」という昔の考えがありましたが、今は個人の自由意志によるスポーツの参加が増えています。ヨルダンサッカー協会(以下「ヨルダンFA」)が国内13ヶ所に「プリンスアリ女子トレーニングセンター」(以下「センター」)を開設し普及に努めていることから、2014年にトップ代表チームが、2015年にはU14代表がそれぞれ西アジア地区の大会で優勝し、少しずつ成果が出始めているところです。2016年9月には、ヨルダンで中東初のFIFA U-17女子ワールドカップ開催が決定しており、西アジア地区の女子サッカー発展の起爆剤としてスタジアム改修やグラウンド整備などの環境改善も見込まれています。

イスラム圏における女子サッカーの指導ということで、屋内で練習するなど多くの制限を予想していましたが、センターの選手達は驚くほど元気に活動しています。外遊びの習慣がないせいか、センター同士の交流戦では飛び上がって絶叫する応援合戦で盛り上がります。頭に覆っている布「ヒジャブ」の着用は各家庭の信仰や本人の意思でまちまちですが、試合で着用する場合は「ユニフォームと同色」という規程があり、マッチコミッショナーが試合前に確認を行います。

現在の活動

私は前述の「ヨルダンFA・プリンスアリ女子トレーニングセンター」のテクニカルダイレクターとして活動しています。国内13ヶ所のセンターを定期巡回し、全指導者26名と育成ビジョンを共有しながら選手の能力向上に努めています。各センターには10~15歳の少女が30名程在籍して週3回トレーニングを行っています。赴任当初は、「送迎バスがない」「グラウンドが使えない」など勝手にトレーニングを中止するセンターがありました。そこで、FacebookやSNSで他のセンターの活動紹介の共有を始めた結果、良い意味での競争意識が生まれ、センター同士が切磋琢磨するようになりました。ゲームの機会を増やすため、交流戦やリーグ戦を新設したところ大変盛り上がり、指導者達からもっと試合数を増やしてほしいという要望も出ました。サッカー人口底辺拡大のため、学校の女性体育教師対象の指導者講習会や10歳以下の少女向けにグラスルーツフェスティバルも多く開催しています。

9月のリオ五輪アジア予選に向けて

オリンピックアジア一次予選では、日本から派遣されている乗松監督率いるベトナム、同じく柳楽監督率いるチャイニーズ・タイペイとの対戦が控えています。ヨルダンにとってはどちらも格上の相手。ベトナムとはAFC女子アジアカップ2014、チャイニーズ・タイペイとはアジア大会で対戦し苦杯をなめているので今回はリベンジに燃えています。ヨルダン女子代表チームは5月の国内女子リーグ終了後すぐに選手を招集し、ラマダン中の現在でもトレーニングを継続しながら大会に向けて準備を行っています。大会直前になればメディアを含め国内での注目度も増すことでしょう。

今後の取り組み

今後に向けた一つ目の取り組みは、センターからユース代表選手を輩出していくこと。昨年から開催しているエリートプログラムU-13の継続、そして、ゲーム環境をさらに整備し、MTM(マッチ、トレーニング、マッチ)のサイクルを通じた日々のトレーニングの向上です。

二つ目は、ヨルダンFAと協力しての長期的な育成システムの構築と環境整備を行うことです。15歳でセンターを卒業する選手達はユース代表チームに入れなかった場合、トレーニングを継続できる環境がなく、新たな受け皿の創設が大きな課題となっています。また、サッカーに興味を持った少女達がすぐにプレー出来る身近な場の創設など、学校関係者も交えてさらに協議しながら取り組んでいきます。

過去にバングラデシュ、スーダン、インドで指導してきた自分自身の経験を踏まえ、現地のスタッフと彼らの経験・知識・文化を敬い、一緒に課題と対策を考えていく姿勢を大切にしてこれからも課題対策にチャレンジしていきます。

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