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過去の奮闘への感謝 ~いつも心にリスペクト Vol.68~

2019年02月22日

過去の奮闘への感謝 ~いつも心にリスペクト Vol.68~

天皇杯 JFA 全日本サッカー選手権大会も決勝を終え、日本のサッカーにとって実りの大きかった2018年も男子トップクラスのシーズンが終了しました。これからは、来年2月に開幕する新シーズンに向け、各クラブが戦力の強化を図り、さまざまな動きがある時期となります。

プロの世界に不可避なのが「移籍」です。移籍によってステップアップする選手がいれば、出場機会を求めて移籍するケースもあります。隠されていた能力を移籍で発現させ、大きく開花する選手を見るのは、サッカーを見ている者にとってこの上ない喜びです。

ところがサポーターは割り切れません。昨日まで自分たちの宝のように賞賛し、声援を送ってきた選手が、今日からはライバルクラブのユニホームを着て自分が愛するクラブを倒そうと立ち向かってくるのですから…。

その結果、移籍した選手への「ブーイング」が生まれます。Jリーグを見ると、これが実にさまざまで興味深いのですが、あるクラブのサポーターが例外なく「去った」選手にブーイングするかと思うと、別のクラブには、誰に対しても温かい拍手で迎えるサポーターたちがいます。どういう経緯でそうなったのか、どういう思いでそうしているのか、面白い研究テーマになると思うのですが…。

さて、移籍の存在は世界共通です。今月は、香川真司選手が在籍するドイツのボルシア・ドルトムントで今年4月に起きた出来事の話をしたいと思います。

2017/18シーズンのブンデスリーガも大詰め。しかし、すでにバイエルン・ミュンヘンの独走優勝が決まり、あとは「チャンピオンズリーグ出場枠争い」に注目が集まっていました。そんなとき、ドルトムントがホームにバイエル・レバークーゼンを迎えます。同じノルトライン・ウェストファーレン州のチーム同士、サポーターの熱気も高まりました。

ビジターのレバークーゼンにスベン・ベンダーという当時28歳のDFがいました。ボランチあるいはセンターバックとしてドイツ代表でも活躍し、2016年のリオデジャネイロ オリンピックでは銀メダル獲得にも貢献しています。

実はこのベンダーは、ドルトムントに2017年まで8シーズン在籍していました。その間にブンデスリーガ連覇、ドイツ・カップ優勝2回など、大きな貢献をしています。パワフルで忠実なプレーには高い人気がありました。しかし、けがなどで出番が減り、2016/17シーズンはブンデスリーガで6試合の出場にとどまって双子の兄がプレーするレバークーゼンへの移籍を決意したのです。

さて今年4月、昨年7月の移籍以来初めて、ベンダーはドルトムントの「シグナル・イドゥナ・パルク・スタジアム」に戻ってきました。スタンドはこの日も「完全満員」の8万1360人。その中でベンダーもレバークーゼンも奮闘しましたが、ドルトムントの攻撃陣を止めることはできず、4-0でドルトムントに凱歌が上がりました。当然、ベンダーは大きな失望を味わいました。

そのときでした。欧州で最も有名なサポータースタンドのひとつと言っていい巨大な南側立ち見席の2万5000人のドルトムント・サポーターからベンダーへの声援が沸き起こったのです。

気づいたベンダーがサポーター席に歩み寄ります。声援はさらに大きくなり、最後はサポーターとベンダーが調子を合わせて万歳を繰り返し、ベンダーは割れるような拍手に包まれたのです。

「ここでまたプレーできて、とても幸せでした。以前と同じようにファンタスティックな場所で、特別な雰囲気であることも変わりはありませんでした」。感激した面持ちでベンダーは語りました。

サポーターには、ベンダーがドルトムントのために奮闘してくれた8シーズンへの感謝の気持ちがありました。そしてベンダーにも、彼を支えてくれたサポーターへの感謝がありました。互いのリスペクトが生んだシーンは、このシーズンのブンデスリーガでも最も美しいものだったと、翌日の新聞は報じました。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会機関誌『JFAnews』2018年12月号より転載しています。

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