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【審判員インタビュー】サッカーの魅力をより感じ 審判員としての喜びや目標が間違っていなかったと確信 山下良美さん
2022年12月23日
FIFAワールドカップ初の女性審判員の一人に選出され、FIFAワールドカップカタール2022の6試合で第4の審判員を務めた山下良美さん。今大会での経験や現在の思いなどを聞きました。
※このインタビューは2022年12月15日に実施しました。
――FIFAワールドカップを経験されて、現在の率直な感想を聞かせてください。
山下 ピッチ上で観客の感情や声援が肌から伝わってくる、そんな感覚があり、人の心をこれだけ動かせるサッカーの素晴らしさを感じました。同時に、大会を通してこれまで以上にサッカーに魅了されました。
――今大会ではグループステージのグループF、ベルギー対カナダをはじめ6試合で第4の審判員を務めました。
山下 アポイントを聞いたときには、今大会への参加を聞いたときと同じように身が引き締まる思いがしました。実際に審判員の一人としてピッチに足を踏み入れた際には、もちろん緊張感もありましたが、自分の中での強い思いもあり、神経が研ぎ澄まされていくように感じて、これがワールドカップなんだと実感しました。
――第4の審判員は、ピッチに立っている3人の審判員に何かあった際、代わってその役目を務めることになりますが、どのように試合を見ていましたか。
山下 ピッチ内で起こっていることを審判員として見て、自分でも判定をして、必要なときに主審をサポートするという姿勢で臨んでいました。ピッチに立つ審判員と同じように準備し、試合中は、足は動かしませんが、頭はフル回転させていました。
――今大会は史上初めて6人の女性審判員が選出され、グループステージのグループE、コスタリカ対ドイツでフランス人のフラパール・ステファニー主審、ブラジル人のバック・ネウザ副審、メキシコ人のディアス・カレン副審の女性トリオが審判員としてピッチに立ちました。
山下 そのアポイントを聞いたのは、私自身が担当していた試合のハーフタイム中でした。第5の審判員として一緒に試合を担当していたカレン・ディアスさんが副審を務めると聞いて、「ハグはこの試合が終わってからね」と(笑)。女性トリオが試合を担当するというのが本当にうれしくて、3人にハグをしながらおめでとうと伝えました。試合は日本戦と同時刻のキックオフだったので、テレビとパソコンで2試合を同時に見ていました。ただただ楽しみながら観戦できたので、レフェリングも素晴らしいものだったと思います。
――サッカー界にとって大きな一歩だと感じますか。
山下 本当に大きな一歩だと思います。特に女性トリオで担当できたことが大きいですね。可能性が広がった瞬間を目の前で見ることができてうれしく思います。
――参加された女性審判員の皆さんはどのような意見を持っていましたか。
山下 参加するからには笛を吹く、旗を振るということを全員が目指していたので、それぞれがまずは自分自身がしっかりやらなければならない、と。会話をしたり、インタビューを受けているのを見たりしていると、やはり全員が強い思いを持っていて、自分自身の立場に責任を持って行動していると感じました。彼女たちの存在はすごく刺激になりますし、私も頑張らなければいけないとあらためて感じさせてくれました。
――レフェリングなどについて、一人の審判員として今大会をどのように見ていますか。
山下 VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)やアディショナルタイムも含めて、判定に関してはそんなに何かが変わったとは思っていません。アディショナルタイムが長くなったと言われますが、より正確に測るようになったということ。これについては、大会前にカタールのトップチームにお願いして、レフェリーカップという名称で試合をさせていただくなど準備を進めてきました。VARやテクノロジーについても、やっていることはこれまでと同じです。ただ、オフサイドの場面で即座にイラストが出るようになったことなど、皆さんにうまく伝えられる技術が向上したのは変化といえるかもしれませんね。
――今大会に参加したことで新たな気付きや学びはありましたか。
山下 細かな部分での気付きや学びはたくさんありましたが、最も大きなものは二つです。サッカーの素晴らしさと、サッカーはやはりサッカーであるということ。最初にも言いましたように、人の心をここまで動かせる、その素晴らしさを感じました。同時に、サッカーという競技や審判員としてやるべきことは舞台の大きさにかかわらず同じなんだということも感じました。
――レフェリングも含めて、今後ご自身の中で変わっていくと感じている部分はありますか。
山下 審判員はサッカーの魅力を最大限に引き出す存在であるという喜びがあり、魅力だとこれまで言ってきましたが、今大会に参加したことで、それが正しかったと実感しました。今後は、さらにサッカーの魅力を引き出せるよう1試合1試合に向き合っていきたいという気持ちが強くなりました。
――今大会では、日本から選出された審判員は山下さん一人でした。今後多くの審判員がワールドカップの舞台に立つためにも、今大会で経験したことをどのように伝えていくべきだと考えていますか。
山下 それをすごく考えているところです。レフェリングで伝えていくのは非常に難しいですし、言葉で簡単に伝えられるものでもない。何をどう伝えていけばいいのか、まだ分からないですけど、それを考え続けていかなければならないと思っています。
――では最後に、ご自身はワールドカップを楽しめましたか。
山下 楽しむ余裕はなかったですが、楽しめたと思います(笑)。今大会を経験したことでサッカーの魅力をより感じ、これまで目標にしてきたことが間違っていなかったと確信しました。現地では日本人の方はもちろん、カタールの方にも声を掛けていただき本当に驚きました。審判員という存在、そして女性の審判員もいるんだということを今回、多くの方に知っていただいたと実感できたので、ありがたく思っています。
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