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メディカルインフォメーション

1)はじめに

昨今、インターネットの普及により、様々な情報を容易に獲得できる時代となり、その情報は⼤⼈だけではなく育成年代の選手も、スマートフォンやパソコンなどを通して簡単に調べることが出来るようになりました。情報を得ることが当たり前になった今、その情報が正確なものなのかどうかを見極めることが⾮常に重要であると考えています。
これらを踏まえてJFAでは2017年11月に栄養サポート部会を発足させ、JFAとして統一的な栄養に関するガイドラインを作成し、各年代の栄養サポートを中心に活動していくこととなりました。
食事に関して、育成年代では栄養学的なことよりも、まずは生活の基本となる三食を中心に、品目を多く、好き嫌いなく、良い姿勢で、よく噛んで、楽しくゆっくりと食べることが重要です。そして、マナーよく食べることは非常に合理的で日本らしいと思います。
コンディショニングの基礎となるのは、選手の生活習慣(ライフスタイル)です。コンディションを整えるためには保護者や指導者がピッチ上だけでなく、子どもたちのライフスタイル全体を見ることが重要になります。
是非、JFAの栄養ガイドラインを参考にして頂き、選手の成長やコンディション維持にお役に立てれば幸いです。

JFA医学委員会 栄養サポート部会 部会長 前田 弘


2)吉田麻也選手が語る栄養と食事の大切さ

吉田麻也選手

皆さんこんにちは。吉田麻也です。
私は中学1年生から名古屋グランパスエイトの育成組織に入団し、本格的にプロサッカー選手を目指し始めました。そこでは様々なトレーニングに打ち込みましたが、それと同時に管理栄養士の先生から食事指導の講義を受ける時間がありました。そこで食事や栄養の大切さ教えてもらい、初めてその重要性を感じました。また、当時の私は急激に身長が伸び始め、膝や腰に痛みが出るようになった時期でもありました。そういった自分のからだの変化もあり、自分自身のコンディションをきちんとコントロールしようと考えるようになりました。
特に感謝していることは、管理栄養士の先生が、ただ栄養素の知識を講義してくれるだけでなく、なぜその食品を摂取した方がいいのか、なぜ控えた方がいいのかという理由を教えてくれたことです。そのおかげで、自分自身で栄養や食事に対する考え方を組み立てられるようになりました。
サッカーの上達には、トレーニングだけでなく食事や睡眠・休養を取ることが同じくらい重要です。自分のからだと向き合い、自分にとってのコンディショニング方法を考えてみることはとても重要です。
サッカーは日常の習慣や生活がプレーに反映されます。自分の決めたことを毎日きちんと続けること。貫き通すこと。それが試合中のプレーでも妥協しないことや最後まで諦めないことに繋がっていくと思います。
本当に苦しい時に最後まで戦い抜ける選手になるためにも、トレーニング以外の時間も自分を律し、サッカーに取り組んで欲しいと思います。


3)戦うためのからだづくり ~①体力を向上させるためには~

サッカーは体力面の要求度が非常に高いスポーツです。サッカーのパフォーマンスを決定する要素は【図1】のようにとらえることができ、体力面は大きく四つの要素からなっています。

戦うための身体づくり

①持久的パフォーマンス(=持久的能力)
持久的能力は一試合を走りきるために必要となるだけでなく、回復能力の最適化、けがリスクの最小化、心理的負荷許容量の増加、技術的失敗の減少などにも貢献すると考えられています。

②高強度運動パフォーマンス(=高強度運動能力)
試合中のコンディションをより反映する、サッカーには特に重要な要素であり、スプリントなどの高強度運動を短い回復時間で長時間にわたり繰り返すことができる能力と考えられています。

③スピードパフォーマンス(=スピード能力)
サッカーにおけるスピード、特に20mまでの短い距離のパフォーマンスは、試合における決定的な場面(得点場面など)で必要とされる体力要素です。試合中に発揮されるスピード能力には、認知スピードから始まり、予測スピード、決定スピード、反応スピード、運動スピード、行動スピードと移行して関与します。

④筋発揮パフォーマンス(=パワー能力)
爆発的な筋発揮パフォーマンスは、ゴール前やゴールキック後の空中での競り合いの場面などで要求される能力です。また、障害予防の観点から、主に下肢筋群の左右や前後での筋力バランスの均衡が求められています。

サッカー選手には、これらの要素が複合的に必要とされ、一般的にオールラウンドに高いフィットネスレベルが要求されます。
育成年代は成長段階によって、より向上する体力要素に違いがあります。しかし発育発達には個人差が大きいため、暦年齢で必要なトレーニング内容を分けるのがとても難しいのが実状です。
実際の育成年代のトレーニングは生物学的年齢ではなく暦年齢(学年ごとに)で行われているのですが、より生物学的年齢を考慮しながら行うには、定期的な身長測定を実施して個別の成長段階を把握することが推奨されています。
一般的には小学生時代には、走る、投げる、跳ぶ、蹴るなど「運動の基本的な動作」を色々な「遊び」や「スポーツ」を通じて体験すること。身長が大きく伸び始める時期(おおよそ小学校高学年〜中学生年代)には、持久的能力を柱としたトレーニングを行い、身長の伸びがピークとなる時期(おおよそ中学生年代後半〜高校生年代前半)には、持久能力を柱に少しずつパワートレーニングの準備を始め、身長の伸びが少なくなる時期(おおよそ高校生年代後半以降)には積極的にパワートレーニングを行うべきです。
育成年代では、長期的視野で上記の四つの要素を含んだトレーニングを、計画的複合的に実施することが望まれます。


4)戦うためのからだづくり ~②日々の体調管理がトレーニングの質を上げる~

サッカー選手への第一歩は<体調管理>です。

サッカー選手になるためには、限られた練習時間のなかで効率のよいトレーニングを行うことが重要です。このためには身体的にも精神的にも可能な限り良いコンディションで臨み、全力でトレーニングに向き合うことが重要です。自分に最適な体調管理を選手自身が常に求める習慣を持つことが重要であると考えています。【図1】

戦うための身体づくり

体調管理に必要なこと
体調管理に必要な要因としては、睡眠、食事、疲労回復です。疲労回復には身体的なものと精神的なものがあり、これらの疲労を回復するための方法は世界中で探求されています。この疲労回復の基本は、睡眠と食事です。今回は、この体調管理の基本として重要である睡眠と食事に関して述べます。【図2】

なぜ睡眠は重要なのか?
言うまでもありませんが、疲労回復に睡眠はとても重要です。人間には日内リズムがあり、人の細胞は、いつが夜でいつが昼間であるか認識しています。全身の細胞は夜になると成長したり、傷ついている部位を修復したりします。しかし、夜更かしをして、夜中まで光を浴びていると、目を通じて脳が光を感知して、からだがいつ夜であるのか分からなくなってしまい、この日内リズムの破綻が生じてしまいます。それにより、からだの修復が遅くなったり、疲労が取れなかったりする可能性がでてくるのです。この日内リズムをしっかり保つためには、まずは早寝(可能ならば夜9-10時までには寝ていることが望ましい)早起きすることを心がけましょう。【図2】

リズムからみた食事の重要性(栄養と食事は後述)
日内リズムをしっかり保つために、朝ごはんをしっかり食べることが重要であると言われています。早起きして、朝ごはんを食べることにより日内リズムが安定化して、集中力が高まるという報告があります。精神的な疲労は集中力の向上で解決できる可能性があることを考えると、朝ごはんをしっかり食べることは、精神的な疲労の予防や集中してトレーニングを行うことより、同じトレーニングを行っていても、競技力が他の人より向上することを見込めるかもしれません。【図2】

戦うための身体づくり

まとめ
自分にとって最適な生活習慣を探し、身につけることは素晴らしいことです。これを是非活用して、適切な体調管理を行い、素晴らしいトレーニング準備を行ってください。


5)戦うためのからだづくり ~③成長段階にあった食事の摂り方~

サッカーは、持久的運動能力、高強度運動能力、スピード運動能力、筋パワー運動能力が必要となるため、そのためのからだづくりが必要です。

健全な成長が大切
サッカー選手としての戦うためのからだづくりには、からだの土台を築く時期である幼少のころから成人に至るまでに健全な成長を促し、健康的なからだをつくることが大切です。小学生から高校生の時期は身長と体重の増加が大きく【図1】、またからだの臓器や器官の発育も大きい時期【図2】です。からだが成長する時期に、正しい生活習慣と十分な睡眠、そして十分なエネルギーと栄養素のとれる食習慣を身につけることが、サッカーに必要な運動能力を獲得するために必要です。からだは食べ物からできています。毎日の食事が戦うためのからだをつくるために重要な役割を果たしています。

戦うための身体づくり
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戦うための身体づくり

学童期の食事
学童期では自ら食べることに興味・関心をもち、食事が将来のからだをつくることを意識することです。その支えとなり主に食事を整えてくれるのは、保護者が中心になります。保護者の正しい知識と行動が選手のからだづくりに影響する時期でもあります。

思春期・成長期の食事
思春期・成長期は自立の時期です。選手自らが正しい食事の選択ができるようになることが必要です。そのためには選手自身が正しい知識をもち、実践できる力を身に付けることが必要です。

成人期の食事
成人期では全てにおいて自己管理が必要となりますが、戦うためのからだづくりのために自身にとって何が必要か、何をすべきか、その前提に何が問題で何が課題なのかを明確にすることが必要となります。自己判断は必ずしも良い方向に進まない場合もあるため、成人期での戦うためのからだづくりのためには、各分野の専門家に相談することも重要です。

■参考文献
1)小林正子.スキャモンの発育曲線と子どもの発育.子どもと発育発達,12(4),259,2015(一部改変)


6)相対的エネルギー不足に注意を!

スポーツにおける相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sport , RED-S)

国際オリンピック委員会(IOC)はアスリートの健康を守るため、科学的根拠に基づいた合意文章(consensus statement)発表しています。
その一つに“スポーツにおける相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sport , RED-S)”という概念があります。相対的エネルギー不足とは、健康、日常生活、成長および運動活動に必要なエネルギー消費が日常の食事によるエネルギー摂取を上回った為に生じるエネルギーが足りなくなった状態のことを言います。このエネルギー不足は免疫、月経機能、骨の健康、内分泌系、代謝系、血液、成長発達、メンタル、心血管系および消化器系に影響し【図1】、慢性的になると健康とパフォーマンスにまで影響を及ぼすとしています【図2】。

この中で相対的エネルギー不足(利用可能なエネルギー不足、以降エネルギー不足)によって視床下部性無月経と骨粗鬆症が生じた状態を女性アスリートの三主徴【図3】と呼んでいます。

戦うための身体づくり

このエネルギー不足は女性アスリートにおいて月経周期異常や無月経を生じさせるため、月経を通じて男性アスリートより気づかれやすく問題視されていますが、当然男性アスリートにも起こりうる健康被害ですので注意が必要となります【図4】。

戦うための身体づくり

女性アスリートの三主徴において無月経による低エストロゲン(女性ホルモンの一つ)血症はさらに骨粗鬆症を引き起こし、疲労骨折の原因の一つともなり得ます。
このようにエネルギー不足は競技パフォーマンスを低下させ、最終的に競技からの離脱という最悪の問題に発展する可能性をはらんでいるのです。

■参考文献

  • 1) De Souza MJ, Nattiv A, Joy E, et al. et al. 2014 Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement on Treatment and Return to Play of the Female Athlete Triad: 1st International Conference held in San Francisco, California, May 2012 and 2nd International Conference held in Indianapolis, Indiana, May 2013 Br J Sports Med 2014;48:289
  • 2) Mountjoy M., Sundgot-Borgen J., Burke L., et al The IOC consensus statement: beyond the Female Athlete Triad—Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S). Br J Sports Med 48: 491-497 2014


7)サッカー選手にとっての食事の重要性

サッカー選手にとっての食事の重要性は、①からだづくり、②体調管理、③障害予防が挙げられます。 からだづくりのためには、十分なエネルギーと栄養素の補給を考え、毎日の体重測定により、練習や試合で消費したエネルギーを補充できているのか確認することです。また、体重管理だけではなく、体調管理として日々の疲労度や食欲などの自分自身の体調面を振りかえり、十分な栄養素の補給に努めることで、障害予防にもつながります。

サッカー選手にとっての食事の重要性


8)戦うからだをつくるための基本の食事

大切な食習慣とは
高い競技力を保持するからだには、筋・脳・内臓に十分なエネルギー源を蓄えていること(エネルギー)、そのポジションに見合った筋肉や骨格を作ること(からだづくり)、トレーニング後や試合前の体調を整えること(コンディショニング)、障害の予防及び改善に取り組むことが不可欠になります。そのためには、食事からエネルギー及び栄養素を過不足なく摂取することが重要です。
(1)欠食をしない
(2)食品摂取の偏りをなくす・好き嫌いをしない
(3)アスリートの「基本的な食事の形」【図1】をそろえる
(4)トレーニングに合わせた水分・食品を摂取する
の4つの食習慣が基本になります。

戦うからだをつくるための基本の食事

①主食(体を動かすエネルギー源)主に炭水化物:ご飯・パン・麺・もち
②主菜(筋肉、骨、血液など人の体を作る)主にたんぱく質:肉類・魚介類・卵・大豆製品
③副菜(体調を整えたり、骨や血液の材料となる)主にビタミン、ミネラル:野菜・芋・海藻・きのこ
④牛乳・乳製品(骨をつくるのに欠かせない)主にカルシウム、たんぱく質:牛乳・ヨーグルト・チーズ
⑤果物(疲労回復、コンディショニングに役立つ)ビタミンC、炭水化物

エネルギー収支バランスの確認
6)相対的エネルギー不足に注意を!で述べているように、日常での身体活動や成長に加え、激しいトレーニングによりエネルギー消費量が増えるため、消費量に見合ったエネルギー量を食事から摂取し、「相対的エネルギー不足」にならないことが重要です。エネルギーの消費量と摂取量が見合っているかは「体重の変化」でわかります。毎日体重を測定し、エネルギーの収支バランスを確認しましょう【図2】。

戦うからだをつくるための基本の食事

基本の食事をそろえましょう
「エネルギー」となるのは炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質であり、「からだづくり」にはたんぱく質が最も重要となり、ミネラルはその補助をしています。脂質は、細胞膜や体脂肪組織を形成します。「コンディショニング」は生体内の化学反応を円滑に行う、スポーツ障害を予防するという点からビタミン・ミネラルに代表されます。表1に日本人の食事摂取基準(2015年版)に示されている摂取目標量を示します。必要なエネルギーと栄養素をバランスよくとるために、「主な栄養素のはたらきと多く含まれる食品【表2】」を把握しましょう。実際に日常的な食事においては、毎食アスリートの「基本的な食事の形」【図1】をそろえることが理想的です。

【表1 1日の目標栄養摂取量(18歳以上)】
男子女子
エネルギー(kcal)3,0502,200
炭水化物エネルギー比率(%)50〜6550〜65
たんぱく質(g)6050
脂質エネルギー比率(%)20〜3020〜30
カルシウム(mg)850650
鉄(mg)76.0〜10.5
ビタミンA(μgRAE)850650
ビタミンB1(mg)1.41.1
ビタミンB2(mg)1.61.2
ビタミンC(mg)100100
ビタミンD(μg)5.55.5
ビタミンK(μg)150150

【表2 主な栄養素のはたらきと多く含まれる食品】
栄養素主なはたらき多く含まれる食品
炭水化物(糖質)体を動かすエネルギー源
脳の唯一のエネルギー源。
ご飯、パン、麺類、餅、芋類、バナナなど
たんぱく質筋肉、骨、血液などの材料となる。肉、魚介、卵、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品など
脂質細胞膜やホルモンの生成に必要。
エネルギー源。
脂溶性ビタミンの吸収を助ける。
油、バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、 肉の脂身など
ミネラルカルシウム骨や歯の形成、筋肉の収縮などに必要。牛乳・乳製品、小魚、大豆・大豆製品、ひじき、青菜など
赤血球の成分として、酸素や栄養素の運搬にかかわる。牛肉(赤身)、レバー、かつお、あさり、大豆・大豆製品、青菜など
ビタミンビタミンA皮膚と粘膜を健康に保つ。
明暗に順応する視力にかかわる。
レバー、うなぎ、卵、牛乳・乳製品、緑黄色野菜など
ビタミンB1炭水化物からのエネルギー産生に必要。豚肉、ハム、うなぎ、大豆・大豆製品、玄米、胚芽精米、緑黄色野菜など
ビタミンB2炭水化物・たんぱく質・脂質の代謝に必要。うなぎ、レバー、ぶり、さば、卵、納豆、牛乳・乳製品、緑黄色野菜など
ビタミンC抗ストレス作用、抗酸化作用、鉄の吸収促進、コラーゲンの生成に必要。かんきつ類、キウイ、いちご、柿、緑黄色野菜、淡色野菜、芋類など
ビタミンDカルシウムの吸収を高め、骨や歯の形成に働く。まいわし、さけ、うなぎ、さんま、まがれい、きくらげ(乾)、干ししいたけなど
ビタミンK血液の凝固に働く、骨の形成を助ける納豆、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草、豆苗、鶏もも肉(皮つき)、カットわかめ(乾)など

1日に何をどれだけ食べたらよいか
1日にどのような食品をどれだけ食べたらよいのか、食品と量の例を【図3】に示します。
2,000kcalと3,500kcalの例を示しました。

戦うからだをつくるための基本の食事

■参考文献

  • 1)国立スポーツ科学センター ウイナーズレシピ
  • 2)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書
    日本人の食事摂取基準(2015年版)第一出版,2014.
  • 3)(財)日本体育協会スポーツ医・科学専門委員会監修
    アスリートのための栄養・食事ガイド.P94.第一出版,2008.
    一部改変:国立スポーツ科学センター アスリートの食事ベーシックテキスト


9)補食でエネルギー、栄養を効果的に補う

補食とは
補食とは朝・昼・夕の3食で足りないエネルギーや栄養素を補給することです。また、練習前に空腹の場合、練習後から夕食までに時間が空いてしまう場合は、効果的なトレーニングとリカバリーのために補食をとるようにしましょう。

運動前・運動中・運動後の補食
運動中の主なエネルギー源は、血中グルコース(血糖)と筋肉・肝臓に貯蔵されているグリコーゲンです。これらが不足すると空腹感・疲労感をおこしやすく、集中力が落ちるなどパフォーマンスの低下の一因となります。運動時間が長くなると、エネルギー源として脂肪が使われる割合が高くなりますが、脂肪が酸化してエネルギー源を産生する反応にもグルコースが必要です。そのため、練習前にはエネルギー補給をしておきましょう。
トレーニング後は、消耗したグリコーゲンを速やかに回復させる必要があるので、炭水化物を十分に摂取することが大切です(図1)。練習後速やかに炭水化物を摂取した場合は、何も摂取しなかった場合よりトレーニング後の筋肉たんぱく質分解が少ないことがわかっています(図2)。さらに炭水化物とたんぱく質を摂取することで、筋たんぱく質の合成が高まることも報告されています。

補食について
補食について

補食のタイミング
基本的には、トレーニング開始2~3時間前、トレーニング終了後はなるべく早いタイミング(終了後2時間以内)で食事時間を設定できるようにスケジュールを組みましょう。
【図3】に運動前と運動後に適した補食例を示します。

戦うからだをつくるための基本の食事

■参考文献

  • 1)Costill DL, et al. : Nutrition for Endurance Sport :Carbohydrate and Fluid Balance. Int J Sports Med, 1: 2-14, 1980
    一部改変:国立スポーツ科学センター アスリートの食事ベーシックテキスト
  • 2)Lemon PW and Mulin JP:Effect of initial muscle glycogen levels on protein catablism during exercise. J Appl Physiol 48:624-629,1980.
    一部改変:国立スポーツ科学センター アスリートの食事ベーシックテキスト


10)効果的な水分補給の方法

サッカー選手はプレーヤーとして、100%のパフォーマンスをしっかりと発揮することが重要です。
そういった中において、夏場のピッチ上は蒸し暑く、環境の厳しい練習場やゲームに臨むにあたり、様々な準備が必要となってきます。そういった環境にむけたJFAにおいて実践している水分補給・暑熱対策を紹介するとともに、様々なサッカーの現場で推奨される熱中症の具体的な予防策や応急処置についても紹介します。
まずからだには、たくさんの水分が含まれています。成人男性で体重の60%、新生児で約80%が「体液」とよばれる水分でできています。つまり、体重70Kgの成人男性ならば、約42リットルもの水分を体内に蓄えていることになります。言うまでもなく人間にとって水分は最も重要なのです。またただの水ではなく、ナトリウムやカリウムが含まれた水分を摂取することも大切です。
1)熱中症を発症しなくても水分摂取の不足によるパフォーマンスへの悪影響も報告されています。体重の2~3%(体重60kgの選手で1.2~1.8kg)の水分を発汗で失うと有酸素性運動能力がおよそ10%下がるという報告もあります。夏の暑い環境下で水分摂取を怠ることは、熱中症の危険性が高くなるだけでなく、有酸素性持久力も低下する等、パフォーマンスの発揮に悪影響を与えてしまいます。トレーニングや試合前、中、後の適切な飲水は、体内水分や循環血漿量の損失を減らし、最大下運動時の心拍数を下げることによってパフォーマンスを維持し、熱ストレス、熱疲労と熱射病を減らすことが報告されています。2kg(約2リットル)の水分摂取と考えると、難しいと感じるかもしれませんが、個人差はあるものの、練習前後で比較するとアスリートは発汗によって1~2kg程度の水分を失うとも言われています。そのため、①運動前に必ず水分を取る。②定期的な水分補給状況のチェック、③自由に水分補給できる環境の準備といったことが必要になります。また、水分補給の目安としては、①のどの渇きを自覚したらすぐに水分補給させ、②運動前後の体重を測定し、体重の減少が認められる場合には水分摂取状況を改善する。
水分補給は練習とは関係なく、日ごろからこまめに摂ることが重要なのです。
最後に、「選手を守れることができるのは、親であり指導者です」

■参考文献

  • 1)Von Duvillard SP, et al, Sports drinks, exercise training, and competition. Current sports medicine reports, 7(4): 202-208, 2008


11)試合前後の食事で意識すべきこと

試合前日の食事は、試合に向けてエネルギーを蓄えること、安全であること、体調を整えることです。 試合後の食事では、からだの回復を促すために補食(補食参照)として炭水化物と水分補給を速やかに行い、その後の食事でからだの回復に必要なエネルギーと栄養素を十分に補給してください。

◆普段通りの食事ができる環境を整える。
普段食べ慣れない食事をすると、体調を崩してしまう恐れがあります。試合前だからと言って特別な食事をするのではなく、日ごろから食べ慣れた食事をとることが試合前の体調管理として重要です。

◆安全性の高い食品や料理を選ぶ。
ベストコンディションで試合に臨むためには、腹痛などの体調不良にならないよう刺身や生卵などの生もの、生焼けの肉などは避けて下さい。海外では飲み水にも注意が必要です。水道の水ではなくボトルウォーターを利用しましょう。また、調理してから時間が経過した料理や食品、保存状態の悪い料理や食品は避けて下さい。

◆体重管理を継続する。
調整期は練習量も減少します。体重管理を継続し、通常トレーニング時に比べて食事量や内容を調整する必要があります。

◆便秘、風邪、ストレス対策に野菜、果物を適度にとる。
試合前の環境の変化等による便秘対策として、水分や食物繊維の多い野菜や果物を適度にとって下さい。また、風邪予防やストレスに対抗するために、ビタミンCが多く含まれる果物や野菜を毎食とって下さい。

◆エネルギー源となる炭水化物をとる。
試合で力を発揮するために体内にエネルギーを蓄えておく必要があります。炭水化物を多く含むごはんやパスタ、パンなどの主食や果物をとるようにしてください。


執筆者
JFA医学委員会
栄養サポート部会
部会長 前田弘
副部会長 亀井明子
部会員 石井美子
部会員 加藤晴康
部会員 土肥美智子
部会員 早川直樹

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