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欧州を訪ねて ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第20回~

2022年06月02日

欧州を訪ねて ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第20回~

このところ、相次いで欧州を訪ねる機会があった。4月は日本代表の仕事でスペインやドイツを、5月はU-16日本代表のルーマニア遠征に帯同した。そしてルーマニアへ発つ直前に元日本代表監督のイビチャ・オシムさんの訃報を聞いた。オシムさんの下でSAMURAI BLUEのコーチを務めた私は、日本サッカー協会(JFA)を代表して5月14日の葬儀に参列するため、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボを訪れた。オシムさんとの思い出や葬儀の詳細は次回に譲ることにして、今回は4月にスペインやドイツで感じたことを記したい。

4月1日に行われたFIFAワールドカップカタール2022の組み合わせ抽選会を終えた後、翌2日夜に私はスペインのバルセロナに向けて移動した。欧州最先端のサッカーに直に触れて次の潮流を探ることと、SAMURAI BLUEを含む各カテゴリーの日本代表の活動が円滑に運ぶように下準備をすることが主な目的だった。バルセロナに着くと、すぐにFCバルセロナの「ラ・マシア」と呼ばれる育成組織を訪ねた。バルサのフベニール(17~19歳)に髙橋センダゴルタ仁胡という8月の誕生日が来ると17歳になる左サイドバックがいて、彼と彼のご家族にお会いするためだった。髙橋君は生まれも育ちもバルセロナで、日本に住んだ経験はない。しかし、お母さんが関西出身なので日本語も何不自由なくしゃべれる。いずれ国籍を選択する時が来たら、母親の国籍である日本、出生地のスペイン、父親の国籍であるアルゼンチンのどれでも選べる。ラ・マシアでも将来を嘱望される彼のようなタレントは早晩、代表レベルでも争奪戦が起こるもの。それを見越して、彼に直接会って「これから日本代表としてプレーする気持ちはあるか」と意思確認をしたわけである。彼の返事は「あります」だった。それを受けて、6月にフランスで開かれる「第48回モーリスレベロトーナメント」(旧トゥーロン国際大会)のU-19日本代表に招集したのだった。このU-19日本代表には髙橋君以外にも、DFの前田ハドー慈英(ブラックバーン・ローヴァーズFC(イングランド))、FWの二田理央(FCヴァッカー・インスブルック(オーストリア))と二人の海外組がいる。社会のグローバル化によって今後、海外で暮らすアンダーエージの日本代表という存在はもっと増えていくと思っている。そういう〝金の卵〟の調査・発掘も我々の大事な仕事の一つと心得ている。

そのバルサの練習場では懐かしい顔にも会った。私が指導者の勉強をするためにバルセロナにコーチ留学をしていた頃、バルサのBチーム(2軍)にいたイバン・クアドラードである。当時のトップチームの監督はオランダ人のルイス・ファンハールで、彼の手により、あのレジェンドのプジョルより先にカンプ・ノウでデビューを果たしたほど、将来を期待されたDFだった。選手としてのキャリアを中国で終えた彼は指導者に転じ、現在はバルサでフベニールのコーチを務めている。「俺のこと、覚えてる?」なんて会話から始まって、「アンダーカテゴリーの代表に選手を招集する時は協力してくれよ」と頼んだら、「うちの育成組織にはアメリカ人もウルグアイ人もいる。全然問題ないよ」と受け止めてくれた。それからバルサの施設を見せてもらったが、リハビリルームなんかはもうクラブの域を超えていて、完全に病院だと思ったほどだった。その施設の中では鹿島アントラーズ出身のバルサB所属の安部裕葵にも会ってリハビリにノウハウを教えてもらった。バルセロナの次に訪ねたのはマドリード。バルサの練習環境を「すごいなあ」と感心しながら眺めていたが、「シウダード・レアル・マドリード」と呼ばれるライバルの施設はそれ以上のスケールだった。ピッチの数を比べてもバルサの8面に対し、レアルは12面。「やれやれ」という感じである。そこではレアル・マドリード・カステージャに所属する中井卓大の練習を視察した。

マドリードでは提携関係にあるスペインサッカー協会を表敬訪問し、フェルナンド・イエロの後任のスポーツ・ダイレクター(SD)であるフランシスコ・モリーナに会った。抽選会で日本とスペインが同じグループリーグに入った直後だったから、話題は当然そこになった。元スペイン代表GKのモリーナSDには「アンダーカテゴリーの交流をもっと活発にしたい」と申し出て好感触を得た。そして「ドーハで会おう」と再会を約して分かれた。スペイン協会のトレーニング施設もホテル、レストランが併設され、敷地内ですべてが完結する立派なものだった。我々も「高円宮記念JFA夢フィールド」という素晴らしい施設を持ち、アジアの中で頑張ってトップレベルに君臨しているけれど、クラブと同じく協会にも「ビッグ」としかいいようがない組織がある。そしてUEFAチャンピオンズリーグ、FIFAワールドカップを勝ち上がるようなチームは結局、ハードとソフト両面でクオリティーをどんどん高め、いろいろな要素を複合的に絡めて総合力で成功をつかんでいることが実感できた。

欧州サッカー連盟(UEFA)は他大陸との親善試合はほとんど組まないで、ワールドカップ予選やユーロ予選、ネーションズリーグなど自分たちの公式戦で日程を埋めている。FIFAワールドカップカタール2022で日本と同じグループに入ったドイツだって、本当は日本対策として韓国あたりとテストマッチを組みたいはずだが、そういうカードを組み込む隙間も無いのが現状。そうやって欧州勢が自分たちだけで切磋琢磨するやり方は彼らにとって問題はないのかもしれないが、アジアの我々にとっては由々しき事態だろう。次回の2026年のFIFAワールドカップのアジア出場枠は8.5に広がる。そうなると今までと同じようなアジア予選の形式でいいのか、きちんと検証する必要があるだろう。今回のアジア2次予選のように大差がつく試合ばかりしていると「これは本当に強化になっているのか?」「もっとアジア全体のレベルを上げる予選のやり方はないのか?」と、どうしても思ってしまう。今後はそういう日本発の提言もアジアサッカー連盟(AFC)にしていきたいと真剣に思う。そうでないと欧州との差は開く一方になってしまうだろう。

話を旅に戻そう。マドリードからバレンシアに飛び、そこから車を2時間ほど走らせてカルタヘナに向かった。岡崎慎司(FCカルタヘナ)に会うためだった。以前に岡崎選手とオンラインで話したことがあり、選手育成に興味を持つ彼と有意義な意見交換ができた。そのお礼を兼ねて訪問だった。クラブの好意でビルドアップとセットプレーに特化した練習を最初から最後まで見させてもらったのも刺激になった。岡崎選手も充実した日々を過ごしているようだった。その日の夜、バレンシア州に本拠地があるビジャレアルCF対FCバイエルン・ミュンヘンのUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦(4月6日)を観戦した。週末に国内リーグ、週の半ばにチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグがある欧州では毎日サッカーを楽しめる感じ。日本でそれらの試合をすべて追うと寝不足になって体がおかしくなってしまうが、欧州にいれば時差がないので本当に心ゆくまでサッカーづけになれる。視聴は基本的に有料で、それが嫌ならバールに繰り出して見る手もあるが、日本の天皇杯に相当するコパ・デルレイは日本でいうところの地上波で放送されていた。ただ、試合開始が夜10時というのは驚いた。試合が終わったら午前1時を回っている。もう我々とは根本的なところで感覚が違うのだろう。

ビジャレアルのコンパクトなディフェンスは「ここまでやるか」というくらい徹底していて、見事にバイエルンを1-0で下した。その興奮も冷めやらぬうちに翌日はUEFAヨーロッパリーグ準々決勝第1戦、アイントラハト・フランクフルト対FCバルセロナ戦に備えてドイツに飛んだ。先発した鎌田大地のワンタッチプレーがフランクフルトの攻撃にいい流れを生むのが印象的だった。フランクフルト滞在中には長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)が滞在先のホテルに来てくれて、彼が現在受講しているドイツの指導者養成の話をしてくれた。彼が指導者の階段を一歩ずつ上がっているのが頼もしい。4月8日は遠藤航、伊藤洋輝がいるVfBシュツットガルト対ボルシア・ドルトムント、翌9日は板倉がいるシャルケ04対ハイデンハイム、10日は三笘薫が所属するユニオン・サンジロワーズと鈴木武蔵がいるベールスホットの試合を見た。その後、欧州拠点のデッセルドルフからマドリードに戻り、11日はラージョ・バジェカーノ対バレンシアCF、12日はレアル・マドリードとチェルシーのUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝第2戦を見た。レアルは延長の末に2-3で敗れたが、2戦合計では5-4と上回って準決勝進出を決めた。このラウンドまで来ると、チャンピオンズリーグの戦いは異次元というレベルに達する。

残念なことに、14日、私は新型コロナにかかってしまった。本当はそこからイタリアに行ってアタランタとライプツィヒのUEFAヨーロッパリーグ準々決勝第2戦、16日にジェノアで吉田麻也所属のサンプドリアとサレルニターナの試合を見る予定だったが、すべてキャンセルとなり、ジェノアで吉田麻也に会うこともできなくなった。新型コロナの陽性と判定されてからは、ずっとマドリードのホテルで箱詰めに。発熱してから5日間は部屋にいて、6日目に熱がなければマスクして外に出てもいいという指示を受けていた。幸い、ずっとたいして熱も出ないで済んだ。スペイン、ドイツを中心に視察しながら感じたのは、それぞれのお国柄の違いのようなもの。例えば、ゴールキックからの試合再開について、スペインのチームはそこからどうパスをつなぎながらハーフラインを越えていくか、その組み立てにかなりの時間を練習で割いていた。実際、試合を見ても、スペインのチームは相手のプレスのかけ方に応じてボランチが落ちる位置を細かく変えて、ワンパターンにならないようにする。一方、ドイツのチームはいかにハーフラインを越えさせないかに腐心する。相手ゴールキックからマンマークでついてビルドアップを徹底的に阻みにかかる。いわばスペインは「矛」の発想から入り、ドイツは「盾」の発想から入るというか。日本はカタールのワールドカップでその「矛」と「盾」と戦わなければならない。

それぞれのチームがどういうサッカーをしたいのか、1試合だけでも生で見るとそれなりに戦略が見えてくる。UEFAチャンピオンズリーグ第2戦のレアル対チェルシーでいえば、チェルシーは6日に1-3で敗れた第1戦を踏まえ、よく考え抜いたビルドアップで逆転を狙ってきた。2トップを真ん中ではなく、時にワイドに張らせたりして、それで先制点を奪うのに成功もした。この時のチェルシーは9日にプレミアリーグのサウサンプトン戦があり、レアル戦までは中2日しかなかった。それでも普段やっている自分たちの戦術とは別の、レアル用に編んだゲーム戦術をちゃんと消化して試合に出してきた。これは本当にすごいことだろう。監督の話が右の耳から入ってそのまま左の耳から抜けるような選手では絶対に無理だと思った。ひとくちに個人能力といっても、能力にはいろいろあるが、監督のオーダーに即応できるのも必須な要素と言える。監督は監督で、少しでも勝てる確率の高いものを緻密に追究する。そんなこだわり、指導者の色を濃厚に感じもした。強豪バイエルン相手にアウェーの準々決勝第2戦(4月12日)を1-1で逃げ切ったビジャレアルのウナイ・エメリ監督も、そういう意味で色の濃い監督だと思う。エメリ監督はイングランドのアーセナル、フランスのパリ・サンジェルマンを指揮した時より、スペインのチームを率いた時の方が断然生き生きする。スペイン以外のチームを率いた時はどこか言葉の壁というか、コミュニケーションの点でうまくいかないのかもしれない。とにかく、欧州のタイトルがかかった試合はメモを取りながら見ていると、あっという間に3枚、4枚と増えていく。そのインプットをダイレクトにアウトアップできないのは結構なストレスで、すぐに練習に反映させることができる監督という仕事に就いている人たちがうらやましくなったくらいだった。

UEFAのチャンピオンズリーグでもヨーロッパリーグでも国内のリーグでも、欧州のスタジアムはコロナ禍の前の姿に戻った感じ。声出しもOKだから、欧州のタイトルがかかった試合になると殺気立った雰囲気になる。サポーターがスタンドでつくるコレオグラフィーもよく考えられていて、見た瞬間に背筋がぞくっとするものもあった。そういう雰囲気を醸し出されると、選手もフルパワーでやらざるを得ない。指導者がモチベーションを上げるとかじゃなくて、最初からナチュラルに選手がマックスの状態で試合に入っていける。昨年のワールドカップ予選のオーストラリア戦でも埼玉スタジアムに日本の選手、スタッフを乗せたバスが入っていくとき、感染対策のルールに従ってフラッグを振ったり、手をたたいたりして大勢のサポーターが出迎えてくれた。そういう気持ちが伝わると、我々の胸も自然に熱くなるものだ。そういうことが、すべての試合に日常的にあるのがヨーロッパや南米のサッカーなのだ。オシムさんの葬儀に参列した翌日だったか、シュツットガルトが1部残留を決めた試合をテレビで見た。遠藤の決勝ゴールが決まった後の騒ぎがすごくて、遠藤も伊藤も乱入したサポーターにキスをされまくっていた。あの試合で逆に降格が決まっていたら扱いは天と地ほど違ったはずだ。そういう意味で本当にDEAD OR ALIVEな毎日を彼らは過ごしている。そこにあるのは本物の熱狂であり、その熱さはサッカー選手のバッググラウンドに絶対に必要なもの。どうすれば、日本のサッカーにもそんな熱を定着させることができるのか。1日でも早く、コロナ禍になる前の姿を取り戻さなければ。旅先でいろいろなことを考えたけれど、最後に思いはそこに行き着くのだった。

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