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全てを“世界基準”に~【コラム】 田嶋幸三の「フットボールがつなぐもの」vol.6~

2017年06月23日

全てを“世界基準”に~【コラム】 田嶋幸三の「フットボールがつなぐもの」vol.6~

アジア最終予選(Road to Russia)も残りあと2試合

日本、サウジアラビア、オーストラリア三つ巴の上位争いの様相を呈しているアジア最終予選(Road to Russia)ですが、SAMURAI BLUE(日本代表)は6月13日(火)、中立国イランでイラク代表と対戦し、1対1で引き分けて勝点を17に伸ばしました。
テレビで観戦された方には不満の残るゲームだったかもしれませんが、標高1200m、気温38度(ピッチ上はそれ以上)、湿度20%以下という過酷な環境の中で、選手たちは身を挺して戦ってくれたと思います。もちろん、勝利で決めたかったですし、得失点差をもっと伸ばせればよかったとは思いますが、この勝点1が、後の2位以内争いに大きく影響することになるかもしれません。決して楽観できませんが、ワールドカップ出場まであと1勝のところまできたことはポジティブに捉えたいと思います。

次のオーストラリア戦は2カ月後の8月31日(木)です。オーストラリアとの過去の対戦成績は8勝9分7敗。簡単に勝てる相手ではありませんが、ホームの利を生かして何がなんでも勝利をもぎ取りたい。というのも、このオーストラリア戦の5日後に行われるサウジアラビアとのアウェイ戦は、移動や時差がある上に、高温多湿という厳しい環境。しかも、中4日で試合に臨む日本に対し、サウジアラビアは中6日。本大会出場の可否をUAEやタイに委ねるようなことは何としても避けたいと思っています。

Jリーグでプレーする選手は夏のリーグ戦の最中ですから、コンディション調整を入念にする必要があります。一方、欧州でプレーする選手にとってはシーズンが始まって間もない時期ですし、けがで離脱していた選手も戻ってきますので、新たにメンバーが加わることでチームが活性化することが期待されます。新たなスタートと捉え、チームが万全の状態で試合に臨めるよう、日本サッカー協会(JFA)としてもできる限りのサポートをしていきます。

FIFA U-20ワールドカップで世界の強豪と相まみえる

韓国で開催されていたFIFA U-20ワールドカップは、イングランドの優勝で幕を閉じました。イングランドにとっては、1966年のFIFAワールドカップ以来の世界制覇です。

5大会ぶりに世界の舞台を踏んだU-20日本代表は、南アフリカ、ウルグアイ、イタリアとグループステージを戦い、1勝1分1敗。各グループ3位チームのうち、成績上位4チームに入ってノックアウトステージに進出しました。ラウンド16では、この大会で準優勝を遂げたベネズエラと対戦。集中した守備で相手の攻撃を抑えながら果敢にシュートを狙いましたが、試合は90分では決着せず、延長戦に突入しました。気力を振り絞ってゴールを狙うも108分にベネズエラに得点を許し、残念ながらベスト8進出はなりませんでした。

90分のうち、15分、20分といった短い時間であれば、世界に通用するプレーを見せていた選手もいました。しかし、前後半通して高いパフォーマンスを維持できない限り、世界トップに君臨することは難しいでしょう。それでも、4強入りしたベネズエラ、イタリア、ウルグアイの3チームと戦えたことは、選手たちにとって非常に意味あることだったと思います。

選手たちは悔しさや無念さをにじませながらも、冷静に、通用したところとしなかったところを口にしていました。
「こういう高いレベルになってくると、相手がこちらの甘さに付け込んでくる」(中山雄太)、「世界と対峙して、ボランチの選手でも1人で打開できる前への推進力を備えていることが分かった」(板倉滉)、「世界はやっぱり大事な場面で決めてくるので、最後のフィニッシュや崩しのオンのプレーの精度をもっと高めていかなければ」(岩崎悠人)、「(U-17日本代表に)選ばれたらこういう終わり方はしたくない。もっともっと努力していきたい」(久保建英)等々、世界レベルを目の当たりにして学ぶことは多かったようです。
奇しくも中山選手が「柏レイソルでは最年少だが、ここでは統率力を求められる」とコメントしていましたが、同じ世代のチームの中で選手がリーダーシップを磨けるような機会も必要だと思います。
昨年から、FC東京とガンバ大阪、セレッソ大阪がU-23チームを編成して明治安田生命J3リーグを戦っています。もちろん、J3の経験はないよりもあるに越したことはありませんが、世界では20歳前後の若手がブンデスリーガやセリエAといったトップリーグで活躍していることを考えると、日本でも18~19歳でJ1リーグでレギュラーを張れる選手を育成していくことが急務だと思っています。

育成が、持続可能な強い日本をつくる

ギニア、オランダ、アメリカのU-16チームを招へいし、株式会社朝日新聞社の特別協賛で開催した今年のU-16インターナショナルドリームカップも若い力が躍動しました。
大会最終日には6,693人もの観客がユアテックスタジアム仙台に訪れたのですが、そのうちの多くが地元のサッカー選手でした。国内で国際大会を開催するということは、出場する選手だけでなく、地元のプレーヤーや指導者が “世界”を知ることにもなります。今大会は高レベルなゲームが多く、内容も良かっただけに、代表選手はもちろん、観戦した選手や指導者にとっても大きな刺激になったのではないかと思っています。

昨年の同大会でマリと戦った時は、球際で勝負することなく、また、相手にプレッシャーをかけることもなく、相手に圧倒されて完敗しましたが、今回は違っていました。球際の激しさやパススピード、プレッシャーのかけ方などが格段に向上し、日本は最終戦で、身体能力に長けたギニアに5-0で大勝。大逆転で優勝を果たしました。

この一年、私も西野朗技術委員長、トレセンコーチらと共に世界基準で戦おうと声高に訴えてきました。前回大会で浮き彫りになった課題を克服しようと取り組んだことが、今回の結果に表れました。
国際大会は、世界の潮流を知り、その年代やカテゴリーの指標になるものです。しかし、海外のチームと対戦することで飛躍的にレベルアップするかといったらそうではありませんし、代表チームの活動だけで選手が大きく成長するものでもありません。しっかりとした技術やフィジカル、判断力というものは日々の活動の中で培われるもので、今回、このような結果が出せたというのは、所属チームでのトレーニングが変わってきたという証でもあります。

この大会で来日したチームはどのチームもプレーのレベル、試合中のプレー態度ともに非常にインターナショナルでした。良い意味でも悪い意味でもU-16とは思えない強かなサッカーをしていたような気がします。
今大会を担当したレフェリーは男性が8人、女性が4人。女性は国際審判員で、男性はJ3やJFLを担当しいている若い1級審判員でした。国内大会とは異なり、コントロール仕切れない場面もあったように思いますが、若手レフェリーにとってもこの大会は国際基準を知るよい経験になったと思います。そういう意味では、同大会は審判員の研修の場にも活用できると思っています。

U-19日本代表は、フランスで開催されていたトゥーロン国際大会2017(5月29日~6月10日)に出場し、キューバ、アンゴラ、イングランドとグループステージで対戦して2分1敗。残念ながら準決勝進出はなりませんでした。
この大会でも優勝したのは、イングランドでした。前回大会を視察した際、イングランドサッカー協会がこれまでになく若手の育成に力を入れているのに気づき、その理由を関係者に話を聞いたのですが、プレミアリーグでは外国人選手の台頭が著しく、自国の選手のプレー機会が減ったことから代表チームにその影響が出て世界大会でなかなか勝てなくなってきたとのことで、危機感を持ったイングランド協会は、協会を挙げて若手の育成に着手したのだそうです。その成果が如実に表れたイングランドを見て、私自身、刺激をもらいました。

世界の強豪国はユース年代や女子サッカーの育成に力を注いでおり、アジアでもタイ、ベトナム、インドネシアといった新興国や西アジア諸国が急成長を見せています。中国に至っては国を挙げてサッカーの普及と育成・強化に取り組んでいます。
来年以降も引き続き、国際試合で得た成果や課題をしっかり分析し、日本全国の指導者や審判員の皆さんと共有していきたい。そして、日々のトレーニングから試合に至るまで、もちろん、オフザピッチにおいても、全てを“世界基準”に変えていきたいと思っています。

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