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日本代表選手ペイメント問題に対する当協会の考え

2011年02月22日

はじめに
 当協会は、これまで、選手の技術向上のために、47都道府県協会や各種連盟と協働し、キッズから日本代表強化まで様々な施策を実施してきました。これらの長年の積み重ねが今日の日本代表チームの世界での活躍を生み出し、海外のトップクラブにおける日本人選手の活躍に繋がっていると考えています。
また、選手のセカンドキャリアのための原資として、移籍金の4%をJリーグが受け取れるようにルール変更するなど、選手の現役引退後に向けた環境改善にも真摯に努めてきました。その考えは変わるものではなく、これからも「選手の社会的な地位向上」のために努めて行きたいと考えています。

 しかし、今般、当協会は一般社団法人日本プロサッカー選手会(以下「JPFA」と言います)から、日本代表選手へのペイメント(勝利ボーナスや大会ボーナス)が著しく低廉であるとして、以下のような要求を受けています。
①FIFAワールドカップ南アフリカ大会で獲得した賞金 の50%の選手への分配
②日本代表(Samurai Blue)戦における試合ボーナスの最低金額を選手1人当たり100万円に(上位大会では更なる増額)
③大会ボーナスとして、大会賞金の50%の選手への分配(大会賞金がない試合であっても、大会賞金のある同レベルの大会を基準としたボーナスの分配)
 当協会は、現在、JPFAと話し合いを継続していますが、以下に述べるとおり、当協会の財政状況、指導・育成・普及活動への影響、代表選手への現在の各種の待遇等を総合的に考慮すると、JPFAの要求金額はあまりに過大であり、受け入れることは出来ないと考えています。
 また、JPFAの担当者は、今後の選択肢の一つとして、代表戦の「ボイコット」を明言していますが、「ボイコット」は日本代表チームを応援しているファン・サポーターへの冒涜であり、当協会は「ボイコット」を交渉材料にするJPFAの姿勢を大変残念に感じています。

当協会の活動について
 当協会は、「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する」ことを理念とする公益団体です。
 その理念の下に、次の3つのビジョンを設定しています。
■サッカーの普及に努め、スポーツをより身近にすることで、人々が幸せになれる環境を作り上げる。
■サッカーの強化に努め、日本代表が世界で活躍することで、人々に勇気と希望と感動を与える。
■常にフェアプレーの精神を持ち、国内の、さらには世界の人々と友好を深め、国際社会に貢献する。
 当協会は、これらのビジョンの実現のために、日本代表チームの強化は勿論のこと、将来の代表選手となるべき若年層に対して、ナショナルトレーニングセンター(トレセン)制度やアカデミーによるエリート養成等を行っているほか、ライセンス制度による指導者・審判員の質の向上やリーグ戦設置による試合環境の改善などの施策を行っています。また、普及活動として各種競技会の開催、施設整備、組織強化、人材育成、各種フェスティバルの開催等、サッカーをより楽しめる環境作りのために、47都道府県協会や各種連盟と協働して様々な活動を行っています。

当協会の財政規模について
 当協会の活動の収入・支出規模は、開催される国際大会の種類や試合数等によって変動しますが、下図の通り、近年は約140億円~170億円で推移しています。これは、ヨーロッパのサッカー強豪国と比べると半分以下の規模です。当協会は、限られた予算を、上記の3つのビジョンの実現のために、日本代表の強化のみならず、将来の日本代表選手の育成、日本全国における指導者・審判員の養成等、多岐に亘るサッカー普及活動に効率よく配分することが求められています。

<過去5年間の収支の推移>
過去5年間の収支の推移

<2009年度の収入内訳>
2009年度の収入内訳
※各項目の主な内容
□事業関連事業収入:オフィシャルスポンサー・オフィシャルサプライヤー収入、ロイヤリティ収入、検定料等
□代表関連事業収入:TV放送権料、チケット収入、スポンサーからの大会ボーナス、大会賞金等
※すべての日本代表チーム(種目別、男女別、年代別)が対象
□競技会開催事業収入:日本代表試合を除く大会・試合のスポンサー収入・TV放送権料・チケット収入等
□指導普及事業収入:スポンサー収入、講習会等参加料等
□補助金等収入:FIFA、JOC、toto等からの助成金
□競技会収入:Jリーグ開催に伴う納付金等

<2009年度の支出内訳>
2009年度の支出内訳
※各項目の主な内容
□代表関連事業支出:代表試合開催費、チームキャンプ・遠征費、選手日当・ボーナス、チームスタッフ人件費、
クラブペイメント、選手・クラブへの所得補償等
※すべての日本代表チーム(種目別、男女別、年代別)が対象
□競技会開催事業支出:日本代表試合を除く大会・試合開催費等、
□指導普及事業支出:ナショナルトレセン・各育成プロジェクト開催費、各種講習会開催費、アカデミー運営費、各種フェスティバル開催費等
□管理費:会議費、事務局運営費、人件費、福利厚生費等
□PHQ支出:プレジデンツ・ミッション運営費等
□登録関係費:47都道府県協会への登録料還元金・基本交付金、登録関連業務費等

日本代表に関連する収入について
 当協会の収入の内、「日本代表関連事業主収入」は、以下の図のとおり、年間約27億円から50億円の間で推移しています。金額に大きな差があるのは、その年に開催される各国際大会の種類(FIFA主催世界大会、オリンピック、AFC主催大会、親善試合等)や開催場所(ホームorアウェイ)によって、賞金やチケット収入、TV放送権料の額が極端に異なってくるためです。

<日本代表関連事業収入の過去5年間の推移>
日本代表関連事業収入の過去5年間の推移

 近年では、日本代表試合といえども常に満員になる状況ではなく、お客様が多く観戦していただけるように、以下の図のようにチケット単価を下げたりしていますので、チケット収入は減少傾向にあります。

<日本代表試合1試合当たりの平均入場者数およびチケット平均単価>
画日本代表試合1試合当たりの平均入場者数およびチケット平均単価

日本代表に関連する支出について
 当協会の支出の大きな割合を占める「日本代表関連事業主支出」は、以下のとおり、年間約40億円から50億円で推移しています。金額に大きな差があるのは、各国際大会(FIFA主催世界大会、オリンピック、AFC主催大会等)の開催時期や代表チームの勝敗によって活動期間が異なり、試合開催費、コーチングスタッフの数、ボーナス支給額等が変動するためです。

<日本代表関連事業支出の過去5年間の推移>
日本代表関連事業支出の過去5年間の推移

選手への各種の待遇について
 当協会は、日本代表チームが世界と互角に戦えるよう、以下のように、優秀なスタッフの確保を含む、代表選手のコンディション維持のための体制を整えています。これらの各種の待遇にかかる費用は、「代表関連事業支出」に含まれます。

選手への直接的な環境整備(Samurai blueの場合)
移動・宿泊での
ストレス軽減
■ビジネスクラスでのフライト ■チャーター機の手配
(必要に応じて) 
■鉄道はグリーン車 
■高級ホテルのシングルルーム
コンディショニング調整 ■ドクターの帯同(1~2名)
■アスレチックトレーナーの帯同 (2~3名)
快適な食事 ■コックの帯同
(1~2名;国際大会時)
選手への間接的な環境整備(Samurai blueの場合)
コーチングスタッフ等の配備 ■監督 
■コーチ(コーチ、アシスタントコーチ、GKコーチ、コンディショニングコーチ、フィジカルコーチ等)
■テクニカルスタッフ(試合分析等)
運営スタッフの配備 ■メディアオフィサー(1~2名) 
■セキュリティーオフィサー(1名) 
■通訳(1~2名) 
■エキップメント(1~2名) 
■宿泊・輸送担当(1名) 
■総務(1~2名)

 

日本代表選手への現在のペイメントについて
 当協会は、「日本代表選手ペイメント規定」に基づき、代表選手への日当やボーナスを支払っています。これも「日本代表関連事業支出」に含まれます。2010年度の「日本代表選手ペイメント規定」のSamurai Blueに関する内容(抜粋)は以下の通りです。

日当
1日1万円
勝利ボーナス ※引分けは半額
ランク金額対象となる大会・試合
Sランク 200万円 ワールドカップ
Aランク 30万円 コンフェデレーションズカップ、アジアカップ、ワールドカップ予選
Bランク 20万円

東アジア選手権、アジアカップ予選、キリンカップ

FIFAランキングTOP10との親善試合
Cランク 15万円 FIFAランキングTOP11~20との親善試合
Dランク 10万円 FIFAランキングTOP21以下との親善試合
上記金額を該当選手全員に一律支給(2004年までは出場実績によって差異あり)
大会ボーナス(単位:万円)
対象大会優勝2位3位BEST
4
BEST
8
BEST
16
ワールドカップ 5,000 3,000 2,000 1,000 800 600
コンフェデレーションズカッフ 300 150 100      
アジアカップ 200 100 50      
東アジア選手権 100 50 25      
上記金額を該当選手全員に一律支給
ワールドカップ出場権獲得ボーナス
1,000万円
最終予選に出場した選手が対象となり、その出場実績に伴い金額を算出
※南アフリカ大会出場権獲得ボーナス算出結果→40万円~1,020万円
※さらに貢献度の高い選手に対し特別報酬として100万円または200万円を追加支給


 また、代表選手が所属するクラブ(国内)にも以下の金額を支払っています。

派遣費 1日5万円
傷害等による出場不能期間の補償 1日3万円

 

 「日本代表選手ペイメント規定」に従って支払われたSamurai Blueに関する選手日当・ボーナスおよびクラブペイメントの年間総額の推移は以下の図の通りです。

<Samurai Blueに関する選手日当・ボーナスおよびクラブペイメントの推移>
Samurai Blueに関する選手日当・ボーナスおよびクラブペイメントの推移

 2009年度に代表選手に支払った選手日当や勝利ボーナス・大会ボーナスは、合計約3億2,500万円ですが、勝利ボーナスをJPFAの要求する1試合1人100万円に増額した場合、約2億4千万円の追加支出が必要となります。予算が限られている現状では、JPFAの要求を実現するには他の支出を削減する必要があり、例えば、強化育成や普及活動のための支出や、将来の代表選手の育成のための支出をカットせざるを得ない事態もあり得ます。

国際大会時のボーナス
 昨年の2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会では、上記のペイメント規定に基づき選手への支払いがなされました。同大会で日本代表は2勝(200万円×2)・BEST16(600万円)という成績でしたので、代表選手1人当たり1,000万円のボーナスが支払われています。
 また、この1000万円に南アフリカ大会出場権獲得ボーナスを加えると、ワールドカップ南アフリカ大会に登録された代表選手23名に以下のボーナスが支払われています。この他にも、3年間に亘るアジア予選の勝利ボーナス(最高総額300万円)も支払われています。

ボーナス合計額
(2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会+出場権獲得)
選手数
2,000万円以上~2,220万円(最高額) 合計6選手
1,800万円以上~1,999万円 合計7選手
1,600万円以上~1,799万円 合計2選手
1,400万円以上~1,599万円 合計4選手
1,200万円以上~1,399万円 合計1選手
1,000万円以上~1,199万円 合計3選手


 南アフリカ大会に関して代表選手に支払ったペイメント(W杯出場権獲得ボーナス除く)は、総額は約2億5000万円です。他にも、スイスでの事前キャンプの運営費、ベースキャンプ地に設置したメディアセンターの建設費、当協会関係者の出張費等を支出しており、結果として、ワールドカップ南ア大会に関する支出は12億円となり、収入約11億円を上回りました。

 

 1月に開催されたアジアカップについては、優勝しても賞金はありませんでしたが、以下の図のとおり、選手に関連する日当・ボーナスおよびクラブペイメントで総額1億円以上が支払われています。

 総額1人当たりの金額
日当 882万円 30万円
勝利ボーナス 3,675万円 165万円
大会ボーナス 4,600万円 200万円
選手計 9,157万円 395万円
クラブペイメント 2,115万円  

 

日本代表選手への補償について
 当協会としては、日本代表選手のケガへの補償については十分に配慮すべき事項であると認識しております。当協会は、傷害保険制度に加えて、平成7年に、所得補償制度を設け、同制度に基づいて現在までの約15年間に総額約1億2,000万円が選手達に支払われています。さらに、選手だけでなくクラブにも、選手が復帰するまでの期間の補償が支払われています。
 この点につき、JPFAは、日本代表選手のケガの補償に関して、選手の所得に関する直接的な補償が一切ないと言及しています。さらに、選手への所得補償制度が設置されていたが選手側の了解なく一方的に中止したとの記述がなされています。これらは事実に反します。

おわりに
 以上のとおり、本協会の財政状況、指導・育成・普及活動の必要性、代表選手への各種の待遇を総合考慮すれば、当協会の現時点の「日本代表選手ペイメント規定」に基づく金額は不当に低いものではないと考えます。また、日本代表に関連して得た収益は日本サッカー界全体のものであり、選手だけに過分に配分されるものでもありません。
 サッカー選手にとって日本代表選手に選出されることは「名誉」にもなり「誇り」にもなります。その「誇り」を胸に、応援するファン・サポーターの思いを背負って、日本のために戦うのが代表選手だと考えます。
 また、選手は、代表選手として国際大会で活躍することにより多大な経済的メリットを得ることも可能です。国際大会での活躍により海外のビッグクラブへの移籍したケースは珍しくありません。メディアを通じてトップ・アスリートとして認知されることにより、選手としての商業的な価値が上がるのみならず、当該選手が所属するクラブは人気が上がり、所属クラブから得る報酬の増額にもつながります。
 JPFAが主張する過大なベースアップは、日本におけるサッカーの発展・振興を推進する唯一の統括団体として、また、スポーツ界を代表する公益団体として、適切ではないと考えます。
 最後に、当協会は、今の制度やルールが完全に正しいと考えるものでもありません。今後も、様々な経済・社会状況の変化に応じて、選手の意見も参考にしながら適宜対応していくことが重要であると認識しています。

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