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モロッコ・ファンの温かな拍手 ~いつも心にリスペクト Vol.63~

2018年08月29日

モロッコ・ファンの温かな拍手 ~いつも心にリスペクト Vol.63~

4年に一度のワールドカップを楽しむ人生が、もう半世紀近く続いていることに、いまさらながらに気づきました。そしてワールドカップの楽しさが、初めて現地で見た1974年の西ドイツ大会からまったく変わっていないことを、今回、ロシアの地で思いました。

大会の形、とくに財政面の規模やテレビの関与は、当時といまではまったく違ったものとなっています。出場チームも16から32へと増え(もうすぐ48になります)、大会期間も延びました。しかし「世界の大衆のお祭り」という、大会の最も重要な本質は、まったく変わっていないと思います。

ワールドカップは世界の大衆が人種や国籍、そして宗教などあらゆる壁を乗り越え、「サッカー」という「世界言語」を通じて直接触れ合う場所です。そこにあるのは、笑顔とお互いに対するリスペクトの気持ちです。

74年大会では、スウェーデンからきたサポーターと公園でサッカーをして楽しみました。にぎやかで歌がうまいスコットランド・サポーターがお堅いドイツ人を笑顔にしたのを、鮮明に覚えています。

そして今回のロシア大会では、ワールドカップがさらに世界に広がった感じがしました。アジアからも、たくさんの国の人びとがきています。そしてメキシコやコロンビアなどの陽気なファンと楽しそうに交流しています。

試合前にサポーターの集団同士が行き合うと、まずは自分の国の名前を連呼し、次には相手国の名前を連呼して、互いに抱き合い、写真を取り合って交歓します。スタジアムの周辺だけでなく、各都市の有名な観光地、モスクワで言えば赤の広場などでも、そうした光景を見ることができます。試合に勝っても負けても、試合後には相手チームをたたえ合います。

今大会の序盤戦で最も印象的だったのは、大会2日目、6月15日に古都サンクトペテルブルクで行われたモロッコ対イランの試合前の光景でした。

まずモロッコ国歌が演奏(録音ですが)され、モロッコのファンが見事な合唱を見せます。今大会では国歌の演奏中には歌詞がスタジアム内の巨大スクリーンにその国の言葉で映し出されるのですが、モロッコ・ファンの歌声はとても見事でした。続いてイラン国歌。印象的な出来事が起きたのはこのときでした。

1万人近くいるのではないかと思われるモロッコのファンが、イランの国歌演奏が始まると、いっせいに拍手を始めたのです。イラン人たちの歌声をじゃまするようなものではなく、とても穏やかで温かく、やさしい拍手でした。相手チーム、相手の国、民族や人びとに対する親愛感とリスペクトをとてもよく表現していると、私は感心しました。

一般に、外国の国歌が演奏されるときには、リスペクトを表現するために起立し、脱帽し、動かないようにするのが礼儀とされています。そして演奏が終わったら拍手をします。日本国内の国際試合でも、そうした「マナー」が定着したものになっています。

では、演奏中に拍手をするのは無礼なことなのでしょうか。儀礼的なことはよくわかりませんが、モロッコ・ファンの拍手を聞いたときには、「こっちのほうがいいな」とさえ思いました。ただリスペクトを示しているだけでなく、同じ人類としての親愛の気持ちが伝わってきたからです。

この連載の2016年12月号に、相手チームの国歌演奏時に自国サポーターがブーイングを浴びせたとき、イタリア代表G Kブッフォンが穏やかに拍手を始め、それがスタンドいっぱいに広がっていった話を書いたことがあります。

「マナー」通り、相手の国歌にリスペクトを示すのは、厳粛な気持ちになります。しかし21世紀の世界では、ただ形でリスペクトを示すのではなく、もっと積極的に敬愛の気持ちを伝え合ったほうがふさわしいのかもしれません。

もちろん、試合が始まると、モロッコのファンは自分たちのチームに熱烈な声援を送り、ファウルをしたイランの選手には激しい罵声を浴びせていましたが…。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会機関誌『JFAnews』2018年7月号より転載しています。

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