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リスペクトアウォーズ2025を実施 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.129~
2025年11月05日

はじめに
日本サッカー協会(JFA)は9月1日~30日の1カ月間をリスペクト・フェアプレーの強化月間とし、「JFAリスペクト・フェアプレーデイズ2025」を開催しました。
9月13日には、JFAサッカー文化創造拠点「blue-ing!」にて「2025年度リスペクトシンポジウム」を開催し、その中でリスペクトアウォーズ2025の各賞を表彰しました。
リスペクトアウォーズは、ピッチ内外を問わず、リスペクト・フェアプレー精神あふれる取り組みをしている人々やその情景にスポットを当て、表彰する取り組みです。2012年からイングランドサッカー協会を模範にしてスタートし、コロナ禍で中断して以降、3年ぶりの開催となりました。
初めて一般投票も実施
2025年は「リスペクト・フェアプレーに関する事業・取り組み部門」と「リスペクトのためのちょっとした工夫部門」の2つの部門で、自薦他薦を問わずに応募を呼び掛けました。
事業・取り組み部門では、全国から29件のご応募をいただきました。JFAリスペクト委員会での一次選考の後、一般投票を経て、福島県で誕生したアマチュア女子サッカーチーム「FUKUSHIMA WWW.(福島ウィーアー)」が大賞に選ばれました。福島ウィーアーは、対戦相手として訪れた他の都道府県のチームに対し、東日本大震災の被害を風化させず、その教訓や防災意識の重要性を伝えています。そして、未来の防災・減災への意識の向上につなげ、サッカーによる地域活性化の一つのモデルとして活動しています。一般投票の自由記載欄には、「直接的な地域貢献の姿勢が見られて、応援したくなる気持ちに自然となります」「忘れ去られつつある福島の記憶を女子サッカー選手が日々悩みながらも紡いでいる姿はリスペクトしかない」など、心温まるコメントが寄せられました。表彰式では、JFAリスペクト委員会防災・復興支援部会の永島昭浩部会長から「今ある平和を当たり前と思わず、サッカー界だけでなく、社会のことを考えながら、言葉を発して行動していくことが重要だ」というメッセージとともに、お祝いの言葉をいただきました。
そのほか、特別賞として、Inter Tsukuba(ダイバーシティ賞)、一般社団法人S.C.P.Japan(インクルーシブ賞)、公益財団法人東京都サッカー協会 規律・裁定委員会/WOG部会(ウェルフェアオフィサー賞)が表彰されました。また、「ちょっとした工夫部門」では、公益財団法人北海道サッカー協会女子委員会と太田友宜さんが会長賞に選定されました。
表彰式の様子を会場やオンラインで視聴した方の多くが、福島ウィーアーの存在を初めて知ったのではないかと思います。地域を大切に思う気持ちが形となったすばらしい取り組みをリスペクトアウォーズ2025で紹介し、サッカーファミリーの皆さんと共有できたことに大きな意義を感じています。
リスペクトアウォーズとして開催する以上、賞を決めなければなりませんが、本来リスペクトのある取り組みに優劣はありません。実際のところ、一次選考の際、JFAリスペクト委員会の10人の委員の評価は分かれました。社会に対するインパクトを重視して選考される方もいれば、DEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性)の観点や、他に例のないユニークな取り組みであること、誰もが取り組んでいることでも継続的に実施している姿勢を評価される方などさまざまでした。リスペクトの形は一様ではなく、大切に思う人やものをどのように大切にしていくかは、それぞれであって良いものです。賞を授与できなかった取り組みもすばらしいものばかりでした。この場をお借りして、ご応募いただきました皆さんに感謝いたします。
毎回、リスペクトアウォーズに応募された取り組みの中には、JFAリスペクト委員会でも初めて知ることになるものが多く、これらを皆さんと共有できること、すばらしいものを分かち合っていくことに大きな意味があると考えます。
おわりに
他薦によるご応募で受賞した方からのスピーチでは「自分たちとしては当たり前だと思って実施しているので、受賞に驚いた」という発言がありました。全国各地には、リスペクトあふれる取り組みを「当たり前」に行っている方が多くいらっしゃいます。その誰かの当たり前が、全国のサッカーファミリーに伝わり、社会全体に浸透し、本当の意味での「当たり前」になるための一助として、このリスペクトアウォーズがあると認識しています。
今年は「ちょっとした工夫部門」を設けましたが、ささいな工夫だと思うものであっても、誰かの大きなヒントになることがあります。好事例を多く集めて共有し、多くの方に「自分たちも行動してみよう」と思っていただけるよう、リスペクトアウォーズを息長く続けていきたいと思います。今後もぜひ、さまざまな取り組みを自薦・他薦を問わず、積極的にご応募いただければ幸いです。

リスペクトアウォーズ2025表彰式より
「リスペクトのためのちょっとした工夫部門」表彰
| 表彰区分 | 団体・個人名 | 事業・取り組みの概要 |
|---|---|---|
| 会長賞 | 公益財団法人 北海道サッカー協会 女子委員会 |
U-15女子サッカーリーグの申し込み時に、クラブ・ウェルフェアオフィサー、 所属クラブにおいてリスペクト・フェアプレーを推進するリーダーの記名を義務付け、 パンフレットにクラブ・ウェルフェアオフィサーの役割について説明を掲載。 また、子どもたちがリスペクト宣言や大会の目標を記入できる欄を設けるなど、 全チーム・全選手が手に取るパンフレットで、リスペクトを推進する工夫を取り入れている。 |
| 太田友宜 | フェアプレーにあふれる行為を示すグリーンカードをスマホケースに携帯し、ピッチ内外を問わず、 リスペクト精神あふれる行動を実践してくれたサッカー仲間やサポーター、家族に対して、 とっさに褒めたり、称えたりしたいときに、 ⾃分の思いを恥ずかしがらずに表現する「グリーンカード携帯作戦」を実践。 |
「リスペクト・フェアプレーに関する事業・取り組み部門」表彰
| 表彰区分 | 団体名 | 事業・取り組みの概要 | |
|---|---|---|---|
| 大賞 | FUKUSHIMA WWW. (福島ウィーアー) |
福島県で誕生したアマチュア女子サッカーチーム「FUKUSHIMA WWW.」は、 対戦相手として訪れた他の都道府県のチームに対し、 東日本大震災の教訓や防災意識の重要性を伝えている。 そして、未来の防災・減災への意識の向上につなげ、 サッカーによる地域活性化の一つのモデルとして活動している。 |
|
| 特別賞 | ダイバーシティ賞 | Inter Tsukuba | 茨城県つくば市近郊の外国人と日本人により結成された社会人チームで、 外国人が主体的に運営に参加。国籍、人種、宗教、言語、文化の違いを超えて、 サッカーを通じて多様性を高め合い、尊重し合う関係性を築いている。 |
| インクルーシブ賞 | 一般社団法人S.C.P. Japan | 障がいの種別を限定しない女の子のための大会「女子パラフットボールフェスタ」を開催。 事前に「リスペクト」の価値やセーフガーディングの基本⽅針を共有し、 勝敗よりも「安心して選手が主体的に楽しめる」環境づくりを重視した大会を実現した。 |
|
| ウェルフェア オフィサー賞 |
公益財団法人東京都サッカー協会 規律・裁定委員会/WOG部会 |
5つの専門委員会と12の加盟団体による合同でのセーフガーディングワークショップを開催。 個々の環境に応じた推進活動の実践につなげられるよう、 「リスペクト・フェアプレー」に取り組む姿勢の確認、 連携、意識、課題の抽出と改善について共有した。 |
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【報告者】今井純子(JFAリスペクト委員長)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2025年9月号より転載しています。
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