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【最後の青春ドラマ】「人生を左右する大きな大会」を経験して立てた誓い~第100回全国高校サッカー選手権大会・岡崎慎司(FCカルタヘナ)後編

2021年12月28日

【最後の青春ドラマ】「人生を左右する大きな大会」を経験して立てた誓い~第100回全国高校サッカー選手権大会・岡崎慎司(FCカルタヘナ)後編

第100回全国高校サッカー選手権大会が12月28日(火)に開幕します。高校年代の大舞台に立った選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここではFIFAワールドカップに3大会連続で出場した岡崎慎司選手(FCカルタヘナ/スペイン)の高校時代のストーリーをお届けします。

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悔しさを胸にキャプテンに就任

滝川第二高校で1年時から全国高校サッカー選手権大会に出場し、2年時の第82回大会ではエースストライカーとして3ゴールを挙げた岡崎慎司。しかし、国立競技場での準決勝では、国見高校に0-4の大敗を喫することとなった。

その試合後、岡崎は当時のキャプテンだった新井俊樹さんから予想外の言葉を掛けられた。

「試合後のピッチの中で、キャプテンから『お前に次のキャプテンになってほしい』と初めて言われました。『お前しかいないだろう』と。僕らの代でキャプテンになる選手は決まっていたんです。キャプテンに向いている選手って、1年生の時から一緒にやっていればなんとなく分かってくるじゃないですか」

自分自身のことを「キャプテン向きではないと思っていた」という岡崎だが、その場ですぐに決断する。「この悔しさを知っている自分がやらなければいけないのかな、と考えました。新井さんとは僕が1年生の時も一緒に選手権に出て悔しい思いをして、今回も国見に負けて。2年間、一緒に感じたことを次につないでいくのは僕しかいないのかな、と」

キャプテン就任を決断した岡崎は、黒田和生監督にその旨を直訴する。当時、滝川第二では投票制でキャプテンを決めていたが、立候補する選手が現れたのは黒田監督のキャリアの中で初めてのことだったという。最終的にはチームメート全員から了承を取り、キャプテンになる予定だった選手にもサポートを依頼して、大役を務めることとなった。

自ら買って出たキャプテンの役割だったが、岡崎にとって大きなプレッシャーになった。「それまでは自分のことだけを考えていればよかったのですが、キャプテンになったら他の選手のこと、試合に出られていない3年生のことなども考えなきゃいけなかったですし、黒田先生は『チームをこのようにまとめていってほしい』というのをキャプテンに伝えて、自分たちでミーティングしていかなければいけなかったので、キャプテンってこんなに大変なのか、というのを感じました」

「僕は気を遣う人間」と自己分析する岡崎。その性格ゆえに思い悩むことが多く、「高校3年生の1年間は、人生で一番、泣いた回数が多かった」と振り返るほど苦しい日々を過ごしたという。

その一方で、チームは確かな成長を見せていった。夏の全国高等学校総合体育大会では準々決勝に進出。国見にPK戦で敗れたものの、1学年下の森島康仁(藤枝MYFCで今季引退)が台頭するなど、2年生と3年生が融合してチーム力が高まっていった。「自分たちは強いという手応えを感じ、選手権に向けて『やれる』という思いが強くなりました」と、キャプテンの岡崎もチームの実力に確信を持っていった。

満身創痍で迎えた最後の選手権

滝川第二は兵庫県予選を突破し、第83回大会への出場権を獲得した。しかし、岡崎の体に異変が起きる。何気ないトラップをした瞬間、右足の甲に激痛が走った。「やった瞬間に『ヤバいな』と思いました。痛さで歩けなかったぐらいですから」。診断結果は「疲労骨折」。全治3カ月で、選手権への出場が絶望的な状況に追い込まれてしまった。

しかし、意外なことに「けがをした時に、ちょっとホッとしている自分がいた」という。岡崎はその理由は次のように語っている。

「けがはしんどかったんですけど、キャプテンという立場がそれ以上にしんどかったんです。チームをまとめる役割への意識のほうが大きくて、そればかりを考えていたので。そのまま選手権に出場するに越したことはなかったんでしょうけど、チームを支えることに専念できるようになって、逆にやるべきことが整理されて、頭の中を切り替えることができた部分もありました」

とはいえ、選手権出場を完全に諦めたわけではなかった。必死にリハビリをこなし、けがを負ってから1カ月半で、なんとかピッチに立てる状態へと持っていった。「事前に確認したのは動けるかどうかだけ。シュート練習もしなかったですし、痛み止めを打って、ほぼぶっつけ本番で大会に臨みました」

初戦の相手は本田圭佑を擁する星稜高校。試合は激しい点の取り合いとなり、岡崎は2点ビハインドの64分過ぎからピッチに立った。そして67分には、左からのクロスボールを森島が折り返したボールに飛び込み、1点差に詰め寄るゴールを奪ってみせた。勢いそのままにゴールネットに絡まる、岡崎らしいダイビングヘッドだった。試合終了間際にも味方からの折り返しを左足で合わせたが、相手GKに阻まれ同点ならず。3-4で試合終了を迎え、この瞬間、岡崎の選手権は終わりを告げた。

不完全燃焼だったかもしれない。しかし、意外にも涙は流れなかった。「それまで泣きまくっていたので、その時には涙が枯れていましたね」と岡崎。同時に「この悔しさを晴らし、黒田先生への感謝の気持ちを表現するには、プロの世界で活躍するしかない」という感情も沸き上がったという。すでに清水エスパルスへの加入は決まっていた。その後、彼がどのようなキャリアを積み上げていったかは、サッカーファンなら誰もが知るところだ。

「一人一人にストーリーがある」と彼自身が語ったように、岡崎の選手権には、彼にしか紡げないストーリーがあった。「あの舞台を目指す選手にとって、選手権は人生を左右するほどの大きな大会」という岡崎の言葉には、確かな説得力があった。

第100回全国高等学校サッカー選手権大会

大会期間:2021/12/28(火)~2022/1/10(月・祝)

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