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育成年代のメディカルについて 5

2012年01月24日

『育成年代のメディカルについて5』~JFAアカデミーの取り組み~

目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』


第五回『腰椎分離症について』

前回のオスグット・シュラッター病に引き続き、育成年代で頻出する障害、腰椎分離症について紹介します。
腰椎分離症はスポーツをしている中学生に多く診られる腰の障害です。


 
特に、体幹を反ったり捻ったりする動作が腰椎に負担がかかりやすいと考えられており、サッカーでは
そのような動作が頻発するため、腰椎分離症が多く発生します。また、競技レベルが高いほど発生し
やすいとも考えられています。
 


腰椎分離症は、腰椎の疲労骨折で特に第四・第五腰椎に多く診られます。


 
症状は、腰を反ったり捻ったり動作で痛みが出るケースが多く、その場合腰椎分離症を疑います。


 
治療法は、分離がどのくらい進行しているかによって変わってきます。
早期に発見できた場合は、骨が癒合する(骨折が治る)のを目標として、コルセットなどで固定し、
安静にします。
腰椎は常に負担がかかる部位なので、骨がつくには3ヵ月程度かかることも多くあります。


 
完全に分離してしまって、癒合する見込みがなければ痛みの具合をみながら復帰を目指します。
この場合は骨折したままなので,将来的に疼痛を繰り返したり、分離すべり症へ悪化してしまって
パフォーマンスに影響する危険性があります。


 
そうならないためにも、分離症もオスグット同様、早期発見が非常に重要です。


 
一般的に分離症は、レントゲンで判断されますが、レントゲンではっきりと骨折がみえる時期では、
骨癒合が期待できないことが多く、もっと早い時期に発見する必要があります。そのためには、
MRIとCT検査が有用です。

 
(腰椎を輪切りにしたCTの画像。)

CTでは,小さな骨折線でも明瞭に判断できますし、さらに MRIではCTではっきりする前の段階でも
腰椎の負担のかかっている部分に白く光る影が確認できるため、最も早く分離症を発見できます。
腰痛があって疑わしい場合は、ぜひ、レントゲンだけではなくMRIとCT検査を受けることを強く勧めます。
(早期発見のためには、以前取り上げたセルフチェックが重要です。)


JFAアカデミー熊本宇城における腰椎分離症の発症状況
(開校~2011年12月31日まで)

在籍人数      50名
発症件数      12件
発症時平均年齢  13.5歳

幸い、分離症からすべり症に移行した選手はいません。
アカデミーでは、オスグットが平均12.5歳で発症したのに比べ、腰椎分離症は13.5歳と、少し上の年代で
発症していることがわかります。


 
また、過去に分離症になったアカデミーの選手たちは、
『日常的に行っているセルフチェックで、怪しい日が続いた』
『サッカーをしている時、強く蹴ろうとして踏み込んだ瞬間に腰痛があった』
『クロスが上がってヘディングしようとしたら腰痛があった』などと話していました。


 
これら、生の声も今後選手たちが自分で自分の状態を認識するのに有用な情報です。


 
それでは、腰椎分離症を予防するにはどうすれば良いのでしょうか?


 
一般的に分離症患者には、股関節周囲の柔軟性が低く筋力がない。体幹の安定性が低いという傾向に
あります。
アカデミーにおいても、分離症を発症した選手は他の選手に比べて、股関節周囲の柔軟性が低く、筋力が
不足している傾向にありました。


 
股関節周囲の柔軟性が低いと骨盤の動きが悪くなり、腰椎に必要以上の負担がかかるということが
考えられます。


 
また、体幹の安定性を高めて、かつ股関節周囲の筋力が強くなることも腰椎の負担を減らすためには
重要です。


 
オスグット同様、人それぞれ腰椎に負担のかかる原因が違うため、『コレをしていれば大丈夫!』という
予防法はありません。


 
常に全身的なケアとトレーニングが必要になってくることには変わりありません。

次回、最終回は育成年代に起きやすいその他の障害について、アカデミーの過去の症例をもとに紹介
します。

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