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【ホットピ!~HotTopic~】育成や土台づくりを大切にしながら勝負にこだわる~池内豊ベトナム育成代表監督
2025年10月07日
日本サッカー協会(JFA)は1999年からアジアのさまざまな国や地域に指導者を派遣し、各地の強化、育成、普及に努めています。2003年からJFAで育成、指導者養成に尽力し、今年7月からベトナムの育成代表監督として活動する池内豊さんに現地での取り組みなどについて話を伺いました。
※このインタビューは2025年9月18日に実施しました。
異国での経験は指導者にとって大きな財産になる
――1993年に選手を引退され、その翌年から30年以上にわたって指導者として活動されてきました。
池内 指導者としてのスタートは、フジタ天台マーキュリーという女子チームでした。選手とどうコミュニケーションを取りながらサッカーの質を高めていくのか、ピッチ外での要素も含めいろいろなことを考えさせられました。2002年には知的障がい者サッカーの世界大会、Virtusサッカー世界選手権大会が日本で開催され、私は2001年からその日本代表に携わらせていただきました。選手たちの純粋さや可能性に触れ、指導者は選手たちに影響を受けるのだ、と知りました。その後、JFAで育成年代の指導をしていくことになるのですが、この二つの経験があったからこそ今の自分があるのだと思います。
2009年、監督としてU-17日本代表を率いてFIFA U-17ワールドカップナイジェリア2009に出場
――2003年からJFAで育成、指導者養成に携わられています。この20数年の日本サッカーの育成、指導者養成の発展についてどのようにご覧になっていますか。
池内 2002FIFAワールドカップ日本/韓国は大きな転機になりました。それ以前は、海外の情報はあったものの、それをうまく日本の育成や指導者養成にフィットさせて軌道に乗せることができていませんでした。そこから10年くらいかけて海外の良い部分を取り入れて、試行錯誤しながら日本に合った形にしていきました。キッズや普及などもそうですが、やはりJFAの方針や進め方が良かったのだと思います。日本サッカーを変えたいという強い思いを持った指導者たちが、JFAのバックアップを受けながら良い方向に進めていると思っています。
――JFAは1999年からJFA公認指導者の海外派遣事業(※)をスタートさせました。
池内 JFAは、アジア全体のレベルアップを図り、その中で勝ち抜いていくことが日本サッカーの強化、発展につながると考えています。本当にその通りで、とても大切なことだと思います。やはりまだまだアジアと世界のトップレベルの差はありますから、JFAがアジアをサポートしながら日本サッカーを強くしていかなければなりません。また、指導者にとって経験はとても大切なものです。言葉や文化が異なる中でのチャレンジは、指導者にとって大きな財産になるはずです。私も海外で活動する一人として、頑張っていきます。
※JFA公認指導者の海外派遣の詳細はこちら
https://www.jfa.jp/social_action_programme/international_exchange/dispatch_member/
トレセンと指導者養成をリンクさせて活動の輪を広げたい
――今年2月から4月までU-17ベトナム代表のテクニカルスーパーバイザーを務められました。
池内 日本代表で一緒にプレーしたり、指導者養成でも一緒にやっていたりした越田剛史さんが現在、ベトナムサッカー連盟(VFF)のテクニカルダイレクターを務めています。今年4月のAFC U17アジアカップを前に「力を貸してほしい」と連絡をいただきました。少し悩みましたが、海外でもチャレンジしてみたいという気持ちがあったので、U17アジアカップをチームと共に戦わせてもらいました。
今年2~4月にU-17ベトナム代表のテクニカルスーパーバイザーを務め、AFC U17アジアカップ サウジアラビア2025を戦った
――その後、7月15日から2年間の契約でベトナムの育成代表監督に就任されました。
池内 VFFの会長から直接お話をいただきました。現在のU-15、18の代表チームを2年後のU-17、20のワールドカップに出場させたいという目標があります。それに応えられるかどうか悩むところはありましたが、選手も指導者も熱心で可能性があり、素晴らしい仕事だと感じたので、チャンレンジさせてもらうことにしました。ベトナムには越田さんのほか、女子サッカー統括・育成女子代表監督の沖山雅彦さんもいるので、とても心強いです。
今年7月にベトナムの育成代表監督に就任
――現在の活動内容を教えてください。
池内 結果を出すために、選手を選考して、われわれのコンセプトを伝えながら育成、強化しています。そのためにはまず土台をつくらなければなりません。「あなたがこれまでやってきたことを選手や指導者に伝えてほしい」というVFFからの要望もありましたので、日本に倣ってU-15年代のトレセンを全国3カ所で実施することにしました。そこには多くの指導者にも集まってもらい、トレセンと指導者養成をリンクさせて活動の輪を広げていきたいと考えています。
――異国で活動される中で難しさなどを感じることはありますか。
池内 難しさは感じないですね。指導者は情熱がありますし、選手もテクニックやスピードがあって可能性を感じます。ただ、チャレンジする意欲や目の前の勝負に対するこだわりがある一方、育成の文化はそんなに根付いていないとも感じます。勝負にこだわるのはとても良いことですが、そのためには土台をつくることが重要だということを理解してもらえるように働き掛けています。
育成の現場でも勝つための準備を
――ベトナムでの活動期間は2027年7月15日までとなっています。あらためてこの2年間での目標を教えていただけますか。
池内 最大の目標は先述の通り、2年後のU-17、20のワールドカップ出場です。そのための育成、強化に力を注いでいきます。同時に、将来につながるように裾野を広げる土台をつくっていく。そういう考え方を、指導者をはじめ関係者にしっかり伝えていきたいと思っています。
目標は2年後のU-17、20のFIFAワールドカップ出場。写真は9月に行われた2025 SEOUL EOU CUP
――大変なこともおありかと思いますが、ベトナムでの活動を楽しまれていますか。
池内 楽しんでいます。トレーニングごとに選手たちの成長や変化を感じますし、指導者も学ぼうという姿勢がありますから、本当に充実した日々を送れていると思います。今、進めているトレセン活動などが軌道に乗っていけば、次のステップに進めるのではないかと。その際にはまた皆さんにご報告したいと思います。
――最後に、アジアのレベルアップも含めて、今後、日本サッカーがさらに成長していくためにどのようなことが必要になるとお考えですか。
池内 先ほど、育成や土台づくりなどの大切さを話しましたが、現在の育成現場ではそれが優先され過ぎていると感じることもあります。極端な言い方をすれば、育成だから勝たなくてもいい、と。私は、それは違うと思っています。サッカーの原点は、やはり勝負、勝ち負けなんです。育成年代の指導であっても、勝つためにどういう準備をするか。これを決して忘れてはならないと思います。南米では、育成年代でも代表チーム同士の対戦では徹底的に勝負にこだわりますよね。そういうものを積み上げていかなければ、歴史の差は埋まっていかないのではないでしょうか。
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