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行動規範の策定について ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.126~
2025年06月13日
はじめに
サッカー、スポーツはすばらしいものであり、多くはリスペクトの精神をベースに活動していただいていると思います。しかし、チーム競技として、集団でチーム内やチーム同士で競争をする中で、さまざまなもめ事が起こってしまうことも確かです。直接的な暴力など明らかなハラスメントに認定される案件の手前でも、英語で言えば「poor practice」と言われる、不十分、不適切な実践がたくさんあります。ハラスメント認定がされるような案件の手前に、日々の活動を楽しむために、解決しておきたいことが多く存在します。そのために大切になるのが、各クラブが「行動規範」を持ち、クラブ活動の参加者がそれを確認しておくことです。
行動規範を策定する意味
人によって大事にしたいことや「当然こうあるべき」と思うことには違いがあります。前述した日々のさまざまなもめ事の多くは、互いの期待の食い違いによって起こります。互いが思う前提が異なる場合、起こってしまったことをすり合わせて解決していくことは困難です。日々情熱を持ち、良かれと思ってやっていることや長年取り組んできたことが、期待のすれ違いの中で問題となってしまうのは避けたいことです。
選手はもちろん、指導者や保護者を含めてこの前提を確認しておくことで、逆に言えば、防げる案件や、起こったときに判断しやすい案件が増えると考えられます。行動規範は、ハラスメントか否かというラインだけで白黒をつけるのではなく、日々起こってしまうさまざまなすれ違いに対して、互いに確認し、改善していくためのものです。
行動規範の策定は、クラブで大事にしたいことや互いに相手に求めること、自分がすべきことを明文化し、確認する作業です。最初は少し手間に感じるかもしれませんが、一度時間をかけて、しっかりとつくり上げて合意することが大切です。子どもたち自身の声もここで聞いておきたいものです。行動規範の策定に関わってもらうことで、自分事として責任を持たせることにもつながります。それを毎年、シーズンに入る際にクラブに関わる全員で確認し、サインをしましょう。新たに加入する選手やスタッフも含め、前提を共通認識とし、一方的ではなく互いの約束としておくべきです。
JFA 第21回全日本女子フットサル選手権大会より
策定する上で気を付ける点
「全員が同じ行動規範を持つ」という方法のほかに、指導者、選手、保護者、スタッフなど分けて策定する場合もあります。一度策定してクラブのホームページに掲げておくだけではなく、実際に毎回活用するもの、可能であれば、常に目につくところに掲出されていると良いでしょう。何か起こった際に、ここで行った互いの約束に基づき、それに対してどうだったのかを考えることができます。
抽象度の高い表現にすると、すり合わせを行ったとしても期待のずれが生じるかもしれません。そのためにも、具体的に考えておくと良いでしょう。また何かが起こった場合、それを含めて行動規範の表記を更新していくことも有用です。クラブウェルフェアオフィサーハンドブックにもその内容を記載していますので、ぜひご参照ください。
クラブウェルフェアオフィサーハンドブックは下記参照
https://www.jfa.jp/respect/safety_protection/welfare
_officer_handbook.pdf
最後に
すでに行動規範を策定しているクラブもあるかと思いますが、シーズンの開始にあたり、この機会に確認を行い、ぜひ生かしていただくことをお願いしたいと思います。日々の活動の中で、軽微なもめ事から解決していき、互いにストレスなくプレーすること、指導することを楽しんでいただく基盤となるはずです。
【報告者】今井純子(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2025年3月号より転載しています。
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