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ユール・ネバー・ウォーク・アローン ~いつも心にリスペクト Vol.48~

2017年05月20日

ユール・ネバー・ウォーク・アローン ~いつも心にリスペクト Vol.48~

「ユール・ネバー・ウォーク・アローン」はJリーグFC東京のサポーターソングです。調布市にある味の素スタジアムでのホームゲームでは、試合前に必ず大合唱があります。

英語というだけでなく非常に難しい曲なのですが、FC東京のサポーターの歌はかなりのレベルにあると私は思っています。しかし多くの相手チームのサポーターは、この歌が始まると妨害する応援を始めます。こうしたやりとりも面白さのひとつであるのですが…。

しかし世界には、対戦する両チームのサポーター同士が連帯感をもってひとつの歌を歌うというすばらしい例があります。それは「ユール・ネバー・ウォーク・アローン」の「本家」とも言うべきイングランドのリバプールFCのホーム、アンフィールド・スタジアムで、昨年の4月に起きました。

そもそもこの曲は、ブロードウェーのミュージカル『回転木馬』の1曲として1945年にアメリカでつくられたものです。これを20年近く経た1963年にイギリス・リバプール市の人気バンド(当時はビートルズと並ぶ人気だったそうです)「ジェリー&ザ・ペースメイカーズ」がカバー、シングルチャート1位という大ヒットになりました。そして「あなたはひとりではない(自分たちがついている)」という歌詞がサッカーの応援にぴったりだったため、翌64年にはリバプールFCのサポーターが歌い始め、「サポーターソング」としても有名になります。

ちなみに日本では68年に現在のテレビ東京で「ダイヤモンド・サッカー」が始まり、その第16回目、7月28日の放送でリバプールFCが登場しているので、意外に早い時期に日本のファンもこの有名な「サポーターソング」を聞いたことになります。

さて、リバプールFCのサポーターがあまりにかっこよかったためか、「ユール・ネバー・ウォーク・アローン」は世界中のさまざまなクラブでサポーターが歌うようになります。そのひとつが、香川真司選手が所属するドイツのボルシア・ドルトムントです。

1996年にドルトムントのバンド「プル・ハーモニー」がこの曲をカバー、大ヒットになります。このバンドはその3年前にアメリカのヒット曲「ゴー・ウェスト」をボルシア・ドルトムントのサポーターソングとしてリリースし、大ヒットしていました。当然、「ユール・ネバー・ウォーク・アローン」もスタジアムで流され、サポーターたちが歌い始めます。

2001年にUEFAチャンピオンズリーグでリバプールがドルトムントを訪れたとき、プル・ハーモニーのボーカリストだったマティアス・カーターがスタジアムに招かれてこの歌を独唱すると、ドルトムントだけでなく、リバプールのファンもマフラーを掲げていっしょに歌ったといいます。

そして昨年4月、両チームは再び相まみえます。UEFAヨーロッパリーグの準々決勝。ドルトムントでの第1戦を1-1で引き分けた後の第2戦、4月14日のアンフィールドでの対戦を前に、両チーム合わせて約4万3000人のサポーターがそれぞれのチームカラーのマフラーを両手にかざし、大合唱を行ったのです。中には、両チームのカラーを合わせたマフラーを掲げるサポーターもいました。それは筆舌に尽くしがたい、感動的な光景でした。リバプールの監督はユルゲン・クロップ。少し前までドルトムントを率いていた名将です。両チームの間にはいろいろな因縁がありました。しかし試合前には、すべての人が仲間でした。

試合は香川選手が起点になってビジターのドルトムントが先制。0-2で迎えた後半立ち上がりにリバプールが1点を返しますが、すぐにドルトムントが1点を追加します。しかしそこからリバプールが奮起、3点を奪って大逆転勝ちを収めました。しかし試合以上に人びとの心に残ったのは、試合前の「ユール・ネバー・ウォーク・アローン」の大合唱だったといいます。いつの日か、FC東京とリバプールFCのサポーターが一緒に歌うのを聞きたいですね。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

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