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メディカル通信

第9回 けがを予防するためのウォームアップの工夫/JFAスポーツ医学委員会 白石 稔

サッカーのウォーミングアップとして,FIFAはThe11+を広く推奨しており,これまでの調査によりこのThe11+は,実際にけがの予防やコンディショニングに有効であることがわかっています. 
今回のメディカル通信では,The11+を参考にしながら,ちょっと発想を変えて,動作や機能の観点から効果的なウォーミングアップの手順について考えてみましたので御紹介します. 
運動をするために必要な身体的要素としては,まず,各関節が十分動く(可動域が大きい)こと,次に,その関節の安定性と動きを生み出す十分な筋力があること,その上で,各関節を複合的に効率よく機能させるための体の軸がしっかりしていることが挙げられます.また,サッカーでは足でボールを扱うという特性から,特に片脚で体を支える能力が重要となります. 
スポーツで上手に体を動かすためには,体幹の安定性,体幹に直接繋がる骨盤・股関節や肩甲帯の機能と,体全体から発生するパワーを直接ピッチに伝える役割を果たす足趾~足関節の機能が極めて重要です.体幹の安定性がしっかりしていると,殿部・股関節+膝関節+足関節・足部がうまく協調的に機能することができるようになり,さらにバランスのよい動きを導き出す肩甲帯の十分な機能が加わってはじめて,身体のどこの部位にも余分なストレスをかけずに(かばったり、代償的な動きをしないで),安全に運動することが可能となります. 
このような発想からウォームアップの手順を考えていくと,最初は、各関節毎の小さな部位からアップをはじめ,次第に広い範囲へと進むこと,つまり,臥位や座位でのアップから,安定して立つ,上手に踏ん張る,歩く,走る(直線/曲線),複雑に動く(スタート/ストップ,ターン,ジャンプ)という要素を順番に進めることが効果的と考えられます.

以下に,参考例を紹介します.図はThe11+からの抜粋です. 
皆さんも色々と方法を考えて試してみては如何ですか?

1,体幹のウォームアップ

ドローイン
各種スタビライゼーション(図1,図2
胸郭・体幹のモビリティー向上

2.肩甲帯のウォームアップ

上肢を大きく動かす
肩甲骨を動かす(寄せる)

3.足趾・足部・足関節のウォームアップ

足関節~足趾の可動域を広げる
足趾の運動(できればピッチ上で,裸足で)
しゃがみこみ(ひらめ筋ストレッチ)
アキレス腱のばし(腓腹筋ストレッチ)
壁押し姿勢での足踏み動作(連動した動き)

4.下肢のウォームアップ

殿部のストレッチ
股関節・膝関節の可動域を広げる
すもうのしこやそんきょの姿勢も有効
下肢全体のストレッチ
殿筋とハムストリングの連動した動き
ヒップアップ
ノルディックハム(図3

5.立位でのウォームアップ

スクワット動作(殿筋とハムストリングを意識)
つまさき立ち(図4
腓腹筋(膝伸展)、ひらめ筋(膝屈曲)
片脚での安定性
片脚バランス
慣れたら上体を動かす(図5

6.動きながらのウォームアップ

各種ランジ動作
ステップ動作(ブラジル体操など)(図6

7.ジョギング

8.アジリティー系(図7

9.スピード・ジャンプ系(図8.図9

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