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ハリルホジッチ新監督 ~いつも心にリスペクト Vol.24~
2015年05月04日
ベルマーレ湘南を率いて昨年のJ2で圧倒的な優勝を果たし、今季のJ1で旋風を巻き起こしている曺貴裁(チョウ・キジェ)監督が書いた『指揮官の流儀~直球リーダー論~』(角川学芸出版)を、人から薦められて読みました。
妥協をせずにサッカーに取り組む曺監督の考えがよく分かり、とても面白い本でした。そしてその中で特に印象的だったのは、曺監督の選手たちに対するリスペクトの気持ちでした。
有無を言わさずに「オレについてこい」というような態度ではありません。フェアに、そして真っ正直に選手たちと向き合い、一人ひとりの選手を“一個の人間”として尊重する態度が、選手たちに心から「やってやろう」という気を起こさせていると感じました。
さて、サムライブルー(日本代表)の新監督に就任したヴァイッド・ハリルホジッチ氏も、その最初のメンバーを発表した記者会見でリスペクトの気持ちをもって選手たちに対する人であることを示しました。ガンバ大阪の遠藤保仁選手に関する話です。
31人の代表選手と12人の「バックアップ選手」、合計43人もの名簿を一人ずつ読み上げ、各ポジションについて説明した後、質問を受けたわけではなく、自ら遠藤の名を挙げて話し始めました。
「彼は日本のレベルを上げてくれた選手だが、このリストには入っていない。私はワールドカップ・ロシア大会(2018年)のために準備をしているからだ。しかしここまで本当に日本代表に貢献してくれた彼のことを忘れてはいけない。彼に敬意を表することを、ここに付け加えたい」
説明するまでもないと思いますが、遠藤保仁は1980年1月28日に鹿児島県の桜島町(現鹿児島市)で生まれ、鹿児島実業高校を卒業して横浜フリューゲルスでプロとなり、京都サンガを経て2001年からG大阪でプレーしているMFです。02年、22歳で日本代表となり、以後、ジーコ、イビチャ・オシム、岡田武史、アルベルト・ザッケローニ、そしてハビエル・アギーレと5人、6代の監督の下で日本代表として活躍してきました。日本代表152試合は、もちろん、日本の歴代最多記録です。
しかし18年のロシア・ワールドカップ時には38歳。遠藤のプレースタイルからすればそのときに日本代表の中心となっていても不思議はないのですが、彼に頼ったチームづくりをするのはリスクが大きいのは間違いありません。そうしたことを考えて、ハリルホジッチ監督は遠藤をリストから外すことにしたのでしょう。
代表監督に就任した外国籍の監督にとって重要なのは、その国のサッカーを、歴史を踏まえて理解し、リスペクトを払うということではないでしょうか。自分が選んだメンバーで勝ち続けるだけでは足りません。心からその国のサッカーを愛し、成長させたい、強くさせたいと思っていることが広く伝わらなければなりません。自分が着任する前にその国のサッカーを支えた「先人」たちを知り、敬意を表明することは、その重要な一要素だと思います。
周囲と衝突を繰り返したフィリップ・トルシエも、カズ(三浦知良)の業績を高く評価し、親善試合で招集してプレーさせました。実現はしませんでしたが、ジーコも同じようなことを考えたときがありました。
選手というのは、監督の「心」に非常に敏感です。指揮官が自分に目を向け、信頼してくれていると感じることが、強いモチベーションにつながります。湘南の選手たちがあれだけ走り、限界にチャレンジしている姿勢を誰にも分かるように示すことができるのは、曺監督から信頼されているからこのチームに在籍し、ピッチに立っているのだということを、毎日感じているからに違いありません。
ハリルホジッチ監督の日本での仕事は始まったばかりで、彼は厳しい表情で「競争が激しくなる」と宣言しましたが、遠藤選手に関するコメントを聞いて、選手たちには、彼の「心」に対する信頼が生まれたのではないでしょうか。
寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)
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