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育成年代のメディカルについて4

2011年11月18日

育成年代のメディカルについて4 ~JFAアカデミーの取り組み~

目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』


第四回『オスグットについて』

今回はオスグット・シュラッター病について紹介します。
オスグットは10歳~14歳の成長期の男子に多いスポーツ障害です。特にサッカーやバスケットボールなどに
多く診られます。


 
1903年にボストンのロバート・ベイリー・オスグットさんとチューリッヒのカール・シュラッターさんにより発見
されたため、オスグット・シュラッター病と呼ばれています。決して、押すとグッと痛み、シマッターと感じる
からではありません。
 

オスグットは腿の前の筋肉、※大腿四頭筋の付着部、(膝の前面)で起きます。
※(大腿四頭筋=大腿直筋+外側広筋+中間広筋+内側広筋)
 

(膝を横から見たレントゲン写真)

成長期の子供たちには、大腿四頭筋が付着している脛骨粗面と呼ばれる部分に、これから成長していく骨の
元となる骨端核があります。


 
スポーツ動作により大腿四頭筋に負担がかかり過ぎると、この部位に牽引力がかかって痛みが出ることが
あります。


 
オスグットは、我慢すれば頑張ってプレーできるくらいの痛みであったり、痛みが出るのは練習前後で、
プレーには影響はなかったりする場合が多く、早期に安静にされないケースが多くあります。


 
しかし、早期に安静にできず、症状が悪化してからでは、
『なかなか痛みが取れない』
『少し休んで良くなっても、プレーをするとすぐ再発してしまう』という状況に陥ってしまう危険性が高くなります。
そうなってしまっては、トレーニングを100%の力で行うことが難しくなり、サッカーの上達にも影響が出て
しまいます。
 

『基礎技術の習得は15歳までが非常に重要。膝や足に痛みがありながら基礎技術の練習を行っても上達
しない。』
元フランス国立サッカー学院(INF)校長 クロード・デュソー氏

アカデミーでも、入校前にオスグットを発症し痛みがありながらプレーを続けていた選手は、完治して合流
するまでの期間が、入校後発症し早期に安静をとった選手と比べ、長くなっています。

JFAアカデミー熊本宇城におけるオスグットの発症状況
(開校~2011年10月31日まで)
在籍人数 50名       
発症数 27件       
平均発症年齢 12.5歳   



この結果からも、早期発見早期安静は非常に重要だと言えます。早期にオスグットを発見するには、



膝の下のデッパリを押すと痛いか?



スクワットをすると膝が痛いか?などのセルフチェックが有用です。
このセルフチェックでの痛みが続く場合、医師の診断を受けるのが賢明です。
早期に発見でき、レントゲン上異常がなく症状があるだけであれば、アカデミー熊本宇城では多くの場合
2~4週の患部安静(症状により異なる)4~6週での競技復帰としています。
 


しかし、早期にオスグットを発見できて、指導者がクラブの練習を休ませていても、活発な子供たちは他の
場所で走り回って遊んでいるということが多々あります。


 
サッカーが大好きな子供たちに、辛い思いをさせて無理に安静を強いるのは、指導者も保護者も心が痛む
ことでしょう。
そんな時は原点に立ち返り、子供たちの目標を再確認しています。



アカデミーの選手たちは皆、プロのサッカー選手になって世界の舞台で活躍することを夢見ているため、
『その夢を叶えるためには、今どういう行動を取るべきだろうか』という観点で考えます。


 
その観点から考えると、育成年代においては、早期にケガを完治させ質の高いトレーニングを行える期間を
長く取る、という選択肢を選ぶケースがほとんどです。

そして、早期安静にし、オスグットを完治させるには、選手自身が、なぜ今安静にしなければならないのか
ということを理解し、ケガは誰かが治してくれるのではなく、自分で治すという強い意志を持つこと


 
指導者や保護者が、焦らずゆっくりやるようサポートし、患部に負担のかからないトレーニングは積極的に
行わせることなどが、非常に重要です。
 


では、オスグットを予防する方法はないのでしょうか?


 
オスグットの原因は、前述した通り、大腿四頭筋に負担がかかり過ぎることです。
トレーニングにおける、大腿四頭筋への負担をコントロールすることは非常に重要です。
しかし、負担をコントロールし過ぎて、トレーニングが質の低いものになってしまっては本末転倒です。


 
アカデミーでは、トレーニングの質を確保しつつ、負担のかかりやすいトレーニングは頻度を調節して行って
います。(シュートトレーニングは週1回。週2回行う場合も連続しては行いません。)


 
これは、トレーニングの強度を弱めれば良いという意味ではありません。トレーニング強度だけが問題では
なく、実際には大腿四頭筋以外の部分の影響が大きくて、結果的に大腿四頭筋に負担がかかっている事
が多いです。
 


例を上げると、体幹が弱く動きの軸がないため、下半身の筋肉に負担がかかり過ぎる。股関節周りの筋肉
が固く、動きが悪い、または弱いため四頭筋に負担がかかる。足首の動きが悪くて四頭筋に負担がかかる
など、様々です。


 
『オスグットにならないためにはコレをすれば良い!』
『オスグットになったらコレをすれば良い!』という特効薬はありません。
常に全身的なケアやトレーニングが必要になります。


 
サッカーを上達させるには質の高いトレーニングが必要で、
質の高いトレーニングを継続して行うには強くバランスの良い身体が必要です。


 
強くバランスの良い身体を作るためには、選手自身がセルフケアの意識を高く持つことが非常に重要です。
アカデミーでは、このような観点からもセルフケアの重要性を選手たちに啓発しています。


 
次回は、同じく育成年代に頻出する障害、腰椎分離症について紹介します。


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