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アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第22回 李成俊 U-14・U-17ブータン代表監督

2016年11月16日

アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第22回 李成俊 U-14・U-17ブータン代表監督

アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第22回は、ブータンサッカー連盟(BFF)でU-14・U-17代表監督を務める李成俊氏のレポートです。

ブータンでの暮らし

赴任半年が過ぎました。毎日とても快適に過ごしています。ブータンは自然が豊かで景色も素晴らしく、人々は温厚で優しく、とてもフレンドリーです。赴任直後は、言葉の問題や、停電、さらに野良犬・牛・馬の多さに驚きました。

習慣で驚いたことは首をかしげる仕草です。日本では「はてな??」 の意味ですが、こちらでは「分かりました。ハイ。」の意味を持ちます。最初は全く知らず、練習中に選手が接触し倒れた際に、「大丈夫か?出来るか?」と問うと、彼は首をかしげたので、「自分で判断できないのか?痛いのか?出来るのか?」と再度尋ねたところ、また首をかしげます。さらにもう一度尋ねても同じです。その後、ふとした瞬間にあれ?と思い、彼の表情でそれが「YESのサイン」だとようやく気付きました。

ある試合前のミーティングで全選手に、首をかしげる仕草について話しました。「サッカーは世界的なスポーツなので、誰にでもYES、NOが通じるようにピッチでは首をかしげるYESは禁止にしよう。皆、いいか!? わかったか?」 すると全員が一斉に同じ方向に首をかしげ、私は笑ってしまいました。これはこちらの習慣なので、理解が必要なのは私の方だったのです。

ブータンサッカーの育成年代

ストロングポイントは何といっても素直なところ。全てをしっかり受け止めようとしてくれます。最後までやりきることや応用力、自律心等は改善が必要ですが、私を信じて取り組んでくれる姿勢にはコーチとして感謝と同時に責任を感じます。

ブータン代表のアカデミーは、4月初旬から6月中旬まで国内リーグである「ティンプーリーグ」に参加、それ以外は学校の試験期間の合間に練習を行っています。11月に入り、2016年アカデミー選手達は解散となりました。12月後半からは前年度の選手も含めて新たな選手発掘のセレクションを実施、2017年2月から新たなチームの活動が始まります。この国では、学校行事が最優先。学業以外にも様々な行事が多く、試合期間が短いこともあり、シーズンを通じて競争、チャレンジから改善すること、そして成功体験を得られる機会が限られているのが問題点です。今年は試合期間に国内遠征を行い、年齢でカテゴリー分けをせずに2週間周期でAチーム、Bチームに分かれてトレーニングや試合を行うなどして工夫しました。

育成年代には、「大改革」ではなく「コツコツとした積み重ね」を念頭に指導しています。ピッチ外では、用具の整理整頓、グラウンドのゴミ拾い、ボールの空気チェック、身なり等から始まり、ピッチ上では「常に試合を意識しているか?」「ワンプレーワンプレーに意図を持って成功を目指そう」「失敗・成功の理由を考えよう」「ミスから考えて成功を目指しているか?」などを呼びかけています。その結果、イージーミスが減り、出来るプレーの幅が増え、少しずつ良いプレーがあちこちで見られるようになってきました。ピッチ内外でも、彼らが率先してゴミを拾ってゴミ箱に入れるシーンは珍しくなくなりました。また、こちらの文化では、目上に人に意見を言う事があまりないのですが、自分で考えて導きだす楽しさや意志表示の大切さを伝えるような環境を作るよう、心がけています。

ブータンから熊本へのメッセージ

4月の熊本震災の際には、ティンプーリーグのピッチ上でU-17ブータン代表チームが熊本に向けたお見舞いのメッセージバナーを掲出しました。私は以前、水戸ホーリーホックに所属していました。そこで東日本大震災を経験しました。今回の震災を受け、ブータンから何ができるかを考え、ブータンサッカー連盟に、「ティンプーリーグの試合前に日本に向けて何かメッセージを送りたい」と相談したところ、快く承諾してくれました。そして、ブータン在住の日本人と日本語学校の校長先生に相談し、あの横断幕をブータン人学生、先生たち、そしてブータンの選手達とで一緒に作ったのです。試合当日はブータンの方はもちろん、ブータンで働いている日本の方々もスタジアムに足を運んで下さり、皆で祈りました。試合会場では小田和正さんの『たしかなこと』が流れ、熱く暖かい雰囲気がチャンリムタンスタジアムを包みました。ブータンの方々の日本に対しての友好と愛情を強く感じた日でした。

日本人指導者達のレガシー

ブータンには歴代の日本人指導者達による功績が多くあります。その一つは、サッカーにおける規律と取り組む姿勢、そして、技術・戦術はもちろん、サッカーの持つ可能性を大いに広げ、ブータンサッカーに良い刺激を与えたことです。ブータンサッカー協会をはじめ、歴代の選手(現在はコーチ)、そして現在の選手達は歴代の日本人指導者達について「あの時はこうだった」「こんなことがあった」など、実に楽しそうに話してくれます。そして、彼等は日本代表、Jリーグ、JFAの取り組み、つまり日本サッカー全体をリスペクトしてくれています。

ブータンの選手たちは今を頑張る事は得意です。しかし、長中短期の目標をたてること、目標達成の為にコツコツと継続する事、チャレンジと改善を繰り返す事には慣れていません。単純なことからでも継続と目標達成。失敗から改善のプロセスを身に着けたい。ブータンの皆さんと一緒に考えながら、この国の未来を担う選手達と一緒に成長したいと考えています。

JFA公認海外派遣指導者

李 成俊 U-14、U-17 ブータン代表監督

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