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【短期連載】JFAメディカルセンター整形外科クリニック リハビリテーション科インタビュー 地域、スポーツ界に貢献を

2023年06月13日

【短期連載】JFAメディカルセンター整形外科クリニック リハビリテーション科インタビュー 地域、スポーツ界に貢献を

福島県のJヴィレッジに隣接したJFAメディカルセンターでは、整形外科とリハビリテーション科の診療を行っている。今号ではリハビリテーション科に勤務する4人の理学療法士(PT)と2人のアスレティックトレーナー(AT)に話を聞いた。

○取材日:2023年4月23日
※本記事はJFAnews2023年5月に掲載されたものです

迅速な診察と治療、適切なリハビリが強み

――檜山さんは2021年3月の再開(※)から勤務され、リハビリチームのリーダーを務められています。JFAメディカルセンター(JMC)の特徴をどう捉えられていますか。

檜山里美 JMCでは運動療法(リハビリ)と物理療法(電気治療など)を通して、患者さんを総合的に診察・治療し、疾患と症状の改善、健康増進を行うことができます。リハビリは機能を改善するだけでなく、予防にも役立ちます。状況に応じて物理療法と組み合わせることでさらに効果を引き出せます。多くの選択肢から患者さんの症状に合わせて治療を行えることは強みです。

(※)JMCは2009年8月1日、福島県のJヴィレッジ内にオープン。11年に発生した東日本大震災によって休院を余儀なくされ、21年3月20日に再開。

――地域のJFAアカデミー福島男子、ふたば未来学園高校の運動部の選手たちも来院していますね。

檜山 育成年代のアスリートにとって、医師の診断を受けて適切にリハビリを行うことで、後遺症が残らないだけでなく競技力の向上も図れます。医師の診断、MRI撮影、リハビリをJMCほど迅速に受けられる環境はなかなかありませんので、地域のアスリートにとっても良い環境を提供できていると思います。

――大熊町の認知症高齢者グループホーム、広野町の指定障がい者支援施設にも毎月訪問して機能回復訓練を実施しています。

小野美香 地域に医療施設が少ないので、こちらから出向いて地域の皆さんの運動機能の維持や向上に寄与できることはありがたいことです。両施設のスタッフの皆さんは非常に友好的で、互いの立場を尊重しつつ、アイデアを出し合って取り組めています。高齢者は運動機能の維持が難しいのですが、コロナ禍で行動制限が生じ、体を動かす機会が減ってしまいました。そのような中で運動機能の回復と維持ができており、一定の成果を出せていると思います。

――堀口さんは物理療法を一人で対応されています。ATとして2021年の東京オリンピック・サッカー競技で審判員をケアしたほか、JFAエリートプログラムなどにも帯同されています。

堀口恵一 物理療法は一人で対応しているため、どうしても患者さんを待たせてしまうことはありますが、できるだけ待たせないこと、満足度が下がらないことを常に意識しています。サッカーの現場で活動しているときは、JMCとはまた別の視点を持つ必要があります。同時に、外での経験によって視野が広がり、JMCでも多くのことに対応できるようになったと感じます。

――信澤さんは昨年9月、大形さんは今年2月に入局されました。JMCの印象はいかがですか。

信澤麻美 少子高齢化が進んでいる地域ですが、以前務めていた病院では、今ほど学生アスリートの対応をする機会はなかったので、日常的に学生アスリートを診る機会があることは良い刺激になっていますし、貴重な経験を積むことができています。

大形麻衣 想像していた以上に来院する学生アスリートが多いなと感じました。檜山さん、小野さん、堀口さんはサッカー現場での経験が豊富で、皆さんいろいろなアプローチをされていますので、働きながら盗み見するなど(笑)、自身の勉強もできる良い環境だと思っています。

――信澤さんは広野町と大熊町、大形さんは大熊町の施設も訪問されていますね。

信澤 院外での対応は、来院される患者さんとはまた異なる特徴があり、症例の幅も広いので難しさも感じています。それだけに良い経験になっています。

大形 どちらの施設も、日常生活を送るのに介助が必要な人々が多くいらっしゃいます。それぞれの運動機能のレベルに合わせて一緒にリハビリを行うことは、良い経験になっています。


広野町の指定障がい者支援施設にも毎月訪問し、運動機能の回復と維持をサポートしている

JMCでのリハビリに加えセルフケアの重要性も

――檜山さん、小野さんは以前、JFAアカデミーやU-17日本女子代表、女子U-15トレーニングキャンプなどでトレーナーをされていました。

檜山 JFAアカデミーや育成年代の選手には、セルフケア、セルフコンディショニングが重要だということを一貫して伝えてきました。自宅や寮に帰った後も自分で同じようにできるよう指導する、ということですね。年齢や症状が違っても、リハビリの根底は同じだと考えています。JMCの患者さんにも、ちゃんと治すためにここでリハビリをするだけでなく自宅などでも実践してもらえるように常に働きかけています。

小野 私は、JFAアカデミーで選手たちと生活する中で、セルフケア、セルフコンディショニングの定着はなかなか難しいということを感じました。そこで伝え方をいろいろと工夫するようになり、アプローチの方法が増えたと思っています。JMCで働くようになり、さまざまな年齢の人々に、どうしたら運動やストレッチを継続して行ってもらえるか。その点に関してはJFAアカデミーでの経験が生きていると思います。

――今後に向けて思いをお聞かせください。

堀口 院内とサッカーの現場で対応が異なることはありますが、患者さんや選手の「状態を改善する」ということに変わりはないと考えています。JMC再開以来、ここで良い経験をさせてもらっています。育成年代を含めたサッカーでの活動とJMCでの経験を相互に吸収して、自分自身の成長とJMCにおける診療の全体的なレベルも上げていきたいと考えています。

大形 経験豊富な皆さんから知識や技術を吸収しながら、患者さんや選手の状態を改善していきたいと思います。個人的には、文献や研究の重要性を感じています。これまでの職場に比べて、ここは学会への参加や研究を行いやすい環境ですので、今後はそうしたことにも取り組んでいきたいと考えています。

信澤 日々の業務では、これまでの経験を生かすことだけではなく、チャレンジングなこともたくさんあります。周りの人たちから学びつつ、乗り越えていきたい。サッカー現場での経験はまだないのですが、今こうした環境で働くことができているので、いつかは経験したいと思っています。

小野 初めての土地、地域の特色がある中で、自分が何をできるか、JMCをどういうクリニックにすればよいのかを考えることが、JMCの存在意義と自身の技術を高めることにもつながっていくと思います。常にそのことを意識しながら日々の診療に当たりたいと思っています。

檜山 JMCが再開して3年目に入りました。振り返ると、再開当初は患者さんが来なくて、日がな一日、ただ患者さんを待っているような日もありました。現在は地域の多くの人々に認知され、来院していただくことも増えてきました。スタッフも増えていますので、提供できる運動療法、物理療法、治療の質をどんどん高めて地域にさらに貢献できるクリニックになることが、現在の一つの目標です。JFAがこうしたクリニックを持っている意義を考え、スポーツ愛好家に有益な情報を提供できるよう、情報発信にも取り組んでいきたいと考えています。

■久保翔太アスレティックトレーナーに聞く

現在、JMCから派遣という形でふたば未来学園高校のトップアスリートコース専任アスレティックトレーナーとして活動しています。
私はずっとサッカーをプレーしてきました。経験のないスポーツに触れ、サッカーとはけがの種類や傾向も違うので勉強になっています。学校の近くにJMCがあることは本当にありがたいなと。即日、MRI撮影、医師の診断が受けられるので、選手も安心しますし、私自身もリハビリを進める過程で助かります。
しかし、最初の頃は、受診することで活動を止められる、というイメージを持っている選手が多く、診察を受けようという選手は少なかったです。適切な診断、適切な処置を早期から受けることで、活動からの離脱を最小限に抑える、活動しながら治していくためにJMCを利用することを監督、先生方、選手たちにご理解いただき、最近では早い段階でJMCに行く選手が増えたと感じています。JMCのような施設が学校の近くにあることは、選手たちにとっても安心だと思います。

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