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[女子チームのつくりかた]千葉市立泉谷中学校女子サッカー部 チーム創設を形にした山中謙太郎先生、そして指導にあたっている佐藤恵先生に聞きました。

2009年11月10日

[女子チームのつくりかた]千葉市立泉谷中学校女子サッカー部 チーム創設を形にした山中謙太郎先生、そして指導にあたっている佐藤恵先生に聞きました。

チームを立ち上げようと思ったきっかけは?

― 山中先生(以下、山中)
私が2006年に泉谷中学校へ着任して、サッカー部の顧問になりました。当時は中学1、2年生女子の保健体育の授業を担当しており、授業内外で生徒たちにサッカーについての話をしていたんです。そうすると女子生徒の中にも「私、やってもいいよ!」といった反応があり、サッカーに対する興味があるのがうかがえました。元々、これまでの指導の場でも女の子はいましたし、私自身の中であまり男子、女子を分けて考えるところがなかったんで。それで、翌年の新入部員募集の際に「女子生徒も加入可」としたんですが・・・希望者は0でした(笑)。体験入部にすら来なかった。いろいろ話を聞いてみると、すでに他の部活動に入っているため、やめるということに抵抗があったり、何より男子と一緒に練習をすることへの拒絶反応がすごかったんです。

ならば、女子サッカー部を作ってみたらと思いました。よく、女子サッカー部は少ないという話は聞いていたので、モデルケースになればいいと・・・。

立ち上げに至るまでの流れを教えてください。

― 山中
そんなことを考えているうちに2007年に佐藤恵先生が講師として着任してきました。女子バスケットのボール部の副顧問として活動していたのですが、サッカー経験者であることを聞いて、女子サッカー部の創設と顧問就任を打診してみたんです。

― 佐藤先生(以下、佐藤) 
私としても興味はあって、サッカー部の練習はよく見てました。自分がやっていた頃と違う練習だったので気になっちゃって(笑)。話を聞いて即OKしました。

― 山中
その後、職員会議で正式に女子サッカー部創立希望の提案をして2008年4月に女子サッカー部が発足し、5人の新入部員でスタートしました。

これまでに生じた最大の壁はどんなことでしたか?

― 山中
活動場所の確保ですね。本校は生徒数が多い上に、グラウンドを使用する部活動が5つもあって他の部活動と分け合わなければいけないので、なかなか男子でもフルで使用することは難しいんです。女子は初年度5名でしたので本当に5メートル四方程度の小スペースでトレーニングを行っていました。5名だからできたことです。人数が増えていくにつれて徐々に進出していく訳ですが、現在もスペースを確保できているとは言えないですね。野球部の外野の端を「ちょっと使わせてください」と交渉して使用している感じです。よく話に聞く「女子がサッカーをするんですか?」といったような反応は他の先生方からも全く出ませんでしたので、苦労という苦労はなかったですね。

独自のアイデアというものはありますか?

― 山中
ゼロからのスタートではありましたが、用具やユニフォームは男子サッカー部のものが活用できました。同時期に男子がユニフォームを新調したこともあって、対外試合が重なっても不都合はありませんでした。しかし、人数が少ないので大会には出ることができません。でも、私が千葉県サッカー協会の技術委員であることや、千葉県教員チームでサッカーをしていることからネットワークがありましたので、このネットワークを最大限に生かしてフットサルやスクールなどの情報を手に入れて、女子選手を対象にしたイベントに積極的に参加しました。

チームが始動してから生じた課題とそれに対する取り組みを教えてください。

― 山中
大会に出場できないということが一つありますが、それは上記のようなイベントに参加することでカバーしていました。2008年12月頃に他の部活動から5名の選手が加わり、今年度は新入部員7名が入りました。入退部を経て、現在はギリギリではありますが11名となり、ようやく日本サッカー協会に登録することができました。また、保護者の方から「もっと女子も見てください」という訴えもありました。これは、チームを立ち上げたものの、私が男子の指導はもちろんですが、他にもトレセン活動や知的障害者サッカーなども指導にもあたっているため、なかなか女子の練習を見ることができなかったために起こったことでした。現実的には今も難しいものがありますが、スケジュールの把握を怠らず、生徒への声かけをすることと、時間が合えば大会を見に行く努力をしています。今は佐藤先生がいるのでこのあたりの問題は解決しています。

― 佐藤
あとは大会が少ないということでしょうか。全日本女子ユース(U-15)選手権は本大会が夏なので予選は春先(5月頃)になります。通常、部活動を引っ張るべき3年生は受験のため夏で引退となります。苦肉の策として夏の時期に3年生最後の大会として一般女子の大会に泣く泣く参加してはこてんぱんにやられて帰ってきました。千葉県にもU-15年代のチームはジェフユナイテッド市原・千葉レディース(U-15)などがありますが、レベルが違いすぎて試合になりません(苦笑)。身近に同じようなレベルのチームがもっとあるといいんですけど、こればっかりは難しいですね。

これからチームが目指すビジョンとは?

― 山中
千葉県の中心で政令指定都市でもある千葉市の中学校に部活動として「女子サッカー部」を創設できたことは大変意義深いものだと考えています。千葉市では学校選択制がまだ導入されていませんが、選択制が導入された場合には女子サッカー部の存在は大きなものになると思います。泉谷中学校は1000名を越すマンモス校です。そのため、部員を集めることも難しくありませんでした。しかし、再来年度に新設校の鎌取第三中学校(仮称)が開校すると生徒数が減少します。そうなれば女子部員の確保が難しくなるかもしれません。また、我々指導者は中学校の教職員であるので異動があります。異動しなければならないときに、次に女子サッカー部を指導してくれる先生が着任していただけるのか、不確定な要素もあります。ようやく日本サッカー協会に登録できたばかりですし、今後はチームの基盤を確固たるものにしていきたいと思っています。

チームトレーニングレポート

 

千葉市立泉谷中学校女子サッカー部はこの年代では珍しく、文字通り中学校の部活動というスタイルで活動しています。平日の放課後と、大会が近い時は土日の両日、それ以外はどちらか一日の週6日間が活動日となっています。チームが始動して2年目を迎え、現在は3年生が引退しているので、部員は2年生が4人、1年生が7人の計11人。試合をするのにギリギリの部員数です。しかも、トレーニングするといっても、グラウンドは男子サッカー部、陸上部、野球部とすし詰め状態で、女子サッカー部が使えるのは、陸上部と野球部の間のわずかなスペースだけ。「最初は今より人数が少なかったので、プールとテニスコートの間の5メートル四方の空間でパスやリフティングをやるといった感じでした。フルコートでなんて、プレーしたこともなかったんです。最初は野球部の顧問の先生に“外野の一部分をちょっとだけ使わせてもらっていいですか?”と協力していただいて、ちょっとずつ侵出しながら(笑)、現在に至っています」と話すのは、指導にあたっている佐藤恵先生。そんな限られたスペースでも生徒たちは毎日懸命にトレーニングに励んでいます。「小学校では遊び程度でサッカーをしていた」という生徒もいれば、「やったことはないけど、仮入部でやったら面白かった」、「やったことのないスポーツだから」といった未経験の生徒がほとんどだということです。

千葉市立泉谷中学校女子サッカー部同じ千葉県ということで、指導にも関心を持っているというジェフユナイテッド市原・千葉レディースの三上尚子選手がトレーニングに参加してくれました。。初めて会うなでしこリーグの選手といっしょにボールを蹴るということもあって、生徒たちはちょっと緊張気味。なかなか話しかけることができません。それでも一緒にパス交換やミニゲームをしていくうちに少しずつ三上選手との距離も近づいていきます。二人組でパス、ヘディング、距離を空けてのパス、4グループに分けてのパスなど、一通り、パスのトレーニングを終えると、2対2、6対6の練習に移行します。この頃には三上選手との1対1の場面にも臆することなくぶつかっていく選手の姿が見られました。しかし、この日はテスト明けということでトレーニング時間は1時間15分。あっという間に時間は過ぎていってしまいました。
千葉市立泉谷中学校女子サッカー部 トレーニングの最後には三上選手から、「中学校の部活動という形でサッカーに触れることができるのは本当に貴重だと思います。みんなもすごく楽しそうにプレーしていて、私も交じってプレーして楽しかったです。もっと練習すればもっと上手くなると思います。がんばってください」と激励の言葉も。三上選手ももっと時間が欲しかったと残念がっていました。

「指導というのは本当に難しいと思います。なでしこリーグのプレーヤーとして“憧れ”という部分もキープしつつ、でももっと何でも聞いてくれるような空気作りも必要ですね。次回来るときは、ちょっといろいろと考えて来たいと思います(笑)」。三上選手にとっても貴重な経験となった様子でした。

トレーニングの様子を見ていた上田栄治女子委員長も生徒たちの印象を「前回視察に来たときは7月。3年生は引退したけど、この4ヵ月で確実に上手くなっていますね。一日一日の積み重ねが大切なんです。今回のように地元のなでしこリーグやJリーグのチームの協力というのは、生徒たちにとって本当に刺激になると思います。学校だけでなく、地域の協力というのは今後の活動に不可欠なものになるでしょう。せっかく女子サッカー部が生まれたのですから、何とか継続できるような道をみつけられるように我々もできることは協力したいと思っています」と話していました。

千葉市立泉谷中学校女子サッカー部 トレーニング後、2年生に話を聞くことができました。いろいろなきっかけで始めたサッカー。「シュートが決まったときや相手を抜くことができたときが醍醐味を感じる瞬間」と楽しそうに語っていました。好きな選手を聞かれ、Jリーガーやなでしこジャパンの選手の名前が挙がるのかと思えば、「3年生の先輩」という答えが返ってきました。その先輩たちも既に引退し、今は自分たちが後輩を引っ張っていかなくてはいけません。「チームワークをもっとよくしなきゃダメだと思います。声をかけたり・・・」リードしていく立場としての自分と「もっと格好いいプレーができるようになりたいです」という自分もいます。今、まさにサッカーからいろんなことを学んでいる、ということがストレートに伝わってくる泉谷中学校女子サッカー部のみなさんでした。

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