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「リスペクトがないと魅力的なスポーツにはならない」 山岸佐知子リスペクト・フェアプレー委員長×佐伯夕利子Jリーグ常勤理事対談 後編

2020年09月10日

「リスペクトがないと魅力的なスポーツにはならない」 山岸佐知子リスペクト・フェアプレー委員長×佐伯夕利子Jリーグ常勤理事対談 後編

JFAは9月5日(土)から14日(月)にかけて、「JFA リスペクト フェアプレー デイズ2020」を設置します。期間中はJリーグや各種連盟、地域・都道府県サッカー協会と協力して、各種試合で「リスペクト・フェアプレー宣言」やバナーの掲出等を行うほか、9月5日(土)にはオンラインでリスペクトシンポジウムを開催しました。
JFAはこれらの活動を通じ、サッカーやスポーツの現場で顕在化する差別や暴力に断固反対し、リスペクト(大切に思うこと)、フェアプレー精神を広く伝えていきます。
ここではJFAリスペクト・フェアプレー委員会の山岸佐知子委員長とJFA女子委員でありJリーグ常勤理事の佐伯夕利子さんによる対談をお届けします。

オンライン取材日:2020年8月14日

前編はこちら

――これまでのサッカー人生の中で、リスペクトを感じた瞬間や出来事があれば教えてください。

山岸 メキシコで1年間、審判活動をしていたことがありまして、メキシコではドリンクを小さなビニール袋に入れ、端を噛みちぎって飲んで、そのままピッチに捨てるんですね。私も最初は衝撃を受けたんですけど、日本のチームが遠征に来た際、試合を担当した友人の審判員が私のところに来て「サチコ、日本人選手はすごいな。相手チームが捨てたビニール袋を全部集めてゴミ箱に捨てて帰ったぞ。試合後にはレフェリーのところに挨拶に来てくれた」と言ったんです。そういうことに対して今まで何も感じなかった人たちがすごく感動してくれて、自分が日本人であることを誇らしく思いましたし、海外に来てそういったことを実践している日本人のことも同時に誇りに思いました。

佐伯 育成年代の街クラブの場合、ギリギリの人数で公式戦に出場することもあります。コンディションが不十分なこともあり、交代枠を使い切った後にけが人が出て人数が足りなくなることが時々あります。そこで相手チームの指導者がどう判断するのかを見ていると、選手を集めてどうするのか尋ね、選手たちの総意として、人数を合わせてゲームを再開させるケースが多いんですよね。そこで選手たちが「数的優位だからもっと得点を入れてやろう」と考えるのではなく、人数をそろえて同等の条件で試合をしようと考える。そういった方向性に導くことが指導者の役割ですし、そこにリスペクトの精神が垣間見えました。

――日本の女子カテゴリーはフェアプレー賞を受賞することが多いと思いますが、国際舞台で活躍されているお二人から見て、どのような理由が考えられるでしょうか。

山岸 決められたことをしっかりやる、一生懸命プレーする、という傾向が強いですよね。これは小学生の頃から協調性を大事にし、ルールを守りながら学校生活を送るという日本人の習慣も関係があると思います。代表選手が集合し、その時だけやろうとするのは難しいですし、日常的な取り組みが影響しているのではないでしょうか。

佐伯 代表ではなく、街クラブが参加するような国際大会でも、日本のチームがフェアプレー賞を受けることが多いですよね。山岸さんがおっしゃったように、集まった時だけいいところを見せようとしてできることではなく、日頃の習慣が無意識に出ていると思います。ロッカールームをきれいにして帰るのはもちろん、練習後に土のグラウンドをならしてお辞儀をし、施設や仲間、レフェリー、保護者に感謝をするというのは伝統として引き継いでいくべきだと思います。

――サッカーでは、なぜリスペクトが必要だとお考えですか?

山岸 サッカーは相手がいないとゲームもできないし、コンタクトスポーツなので、一定のルールを守らないとただの喧嘩になってしまう。その意味でもリスペクトがすごく大事だと思います。たとえば相手がけがをした際にプレーを切るといった行為は、ルールブックには書かれていなくても、選手たちは率先してやりますよね。そうやってお互いをおもんぱかる気持ちがないと、魅力的なスポーツにならないと思います。

佐伯 欧州でのサッカーは残念ながら、憎悪や敵対心、アンチ性、極端な思想を生むスポーツ文化で、サッカーの何かがそういったものを作り上げてきたと思います。そういう欧州のサッカー文化は絶対に真似してはいけないですし、そこから変えていかないと、サッカーが国民にとって真の心のよりどころにはならないと思います。リスペクトという言葉を簡単にとらえず、サッカーがどのような姿であるべきかをみんなで考えないといけないですし、日々の習慣や言動が文化をつくっていくものだと思います。

――リスペクトの重要性を広めるために、今後、JFAとJリーグが協力してできそうなこと、やっていきたいことがあれば教えてください。

山岸 すでにJリーグとの共同でインテグリティセミナーを実施しています。Jリーグは日本サッカーの象徴であり、多くの人が関心を持っています。お子さんたちはピッチ上での選手のパフォーマンスを見て真似をします。選手たちがそういうことを感じながらプレーしていただくだけでも意義があると思っています。トップレベルの選手たちがお手本になるような振る舞いをして、見ている人が「サッカーを見ていると元気が出る。明日からまた頑張ろう」と感じてくれるようになれば、サッカーの価値はもっと高まると思います。

佐伯 私もまだJリーグにお世話になり始めて日が浅いので、具体的な部分はまだ見えていないんですが、JFAやJリーグという組織分けで物事を考えるのではなく、一つのファミリーとしてリスペクトについて議論したり、イベントやセミナーを開催したりして、現場で何が行われているのかを共有しながら学び合うことが大切だと思っています。

プロフィール

山岸 佐知子(やまぎし さちこ)

1973年10月21日生まれ/千葉県出身
短期大学在学中にサッカー部に入部し、1年時に審判員資格を取得。その後、ステップアップを続け、2009年に女子2人目となる1級審判員資格を取得した。03年からは女子国際審判員に選出され、国際大会で主審を務め、15年のFIFA女子ワールドカップにアポイントされる。10年から4年連続でアジア年間最優秀女子レフェリーに選出。15年に審判員活動を勇退。その後、S級審判インストラクターとして審判員の養成に携わり、今年度よりJFAリスペクト・フェアプレー委員長に就任した。

佐伯 夕利子(さえき ゆりこ)

1973年10月6日生まれ/福岡県出身
18歳の頃に父の転勤に伴いスペインに渡り、現地のサッカークラブでプレー。1994年にロス・ジェベネス(対象:10~11歳)で指導者に転身し、その後、レアル・マドリード・サッカースクール(対象:12~13歳)などで指導にあたる。2003年にNIVEL III(JFAのS級ライセンスに相当)を取得。06年にはアトレティコ・マドリードCチームで監督兼育成部副部長を務め、その後、ビジャレアルCFで育成部、ユースAコーチングスタッフ、女子チーム監督などを歴任した。今年度よりJFA女子委員ならびにJリーグ常勤理事に就いた。

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