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アルゼンチンで感じたこと ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第30回~

2023年08月04日

アルゼンチンで感じたこと ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第30回~

アルゼンチンで行われたFIFA U-20ワールドカップ2023を今回は振り返ってみたい。大会は5月20日から6月11日までアルゼンチン各地で行われた。本来はインドネシアで開催されるはずが、イスラエル代表チームの入国をめぐってインドネシア国内で反対運動が起こり、事態を憂慮した国際サッカー連盟(FIFA)がアルゼンチンに開催場所を移し替えて収拾を図ったのだった。仕事の関係で私はチームから遅れて単独でアルゼンチンに入ったのだが、こういうとき、いつも気を使うのが入国の際のパスポートコントロールである。仕事柄、世界中の出入国スタンプが私のパスポートには押してある。それゆえに「何の仕事?」と係官にしつこく聞かれることが多いのである。別に悪いことをしているわけではないから、びくびくする必要はないのだが、押されている国のスタンプによっては向こうが神経をとがらせることがあるので、ついつい「面倒だなあ~」という気持ちが先に立ってしまう。

チームの方は5月11日に日本を発ち、経由地で欧州組をピックアップ、約30時間かけて12日にアルゼンチンのブエノスアイレスに到着した。旅装を解いて、同日午後からすぐに練習を始めた。インドネシアからアルゼンチンに開催地が変われば、日本の裏側への移動に丸1日以上かかるし、12時間の時差もある。インドネシア用に組んだ日程では準備に支障が出る可能性があった。SAMURAI BLUEなら公式戦はすべてインターナショナルウインドウ(IW)に行われるから、選手を集めるのにそれほど神経は使わなくてすむのだが、このU-20ワールドカップはIWの外で行われるから選手の招集にも周囲の理解が絶対的に必要になる。今回、セネガルとの初戦(5月21日・ラプラタ)までに9日間の準備期間を確保できたのは、選手を送り出す側のクラブや大学関係者のご理解、ご協力のたまものだった。

現地到着4日目の5月15日には地元のU-20アルゼンチン代表と練習試合が組めた。準備段階での練習場の確保もエセイサ国際空港近くのアルゼンチンサッカー協会(AFA)のナショナルトレーニングセンターを借りられた。AFAの日本に対する厚遇の背景には、長きにわたり、日本と南米サッカーとの関係構築に尽力された北山朝徳さんの遺徳がある。ブエノスアイレスで会社を興された北山さんは日本サッカー協会の国際委員としても長年活動され、2002年FIFAワールドカップの日本招致などにも多大な貢献をされた。残念ながら2019年7月に亡くなられたが、昨年には日本サッカー殿堂入りを果たされた。私も個人的にいろいろと世話になったことがあり、大会が始まる前にブエノスアイレス近郊の北山さんのお墓参りをし、あらためてご冥福をお祈りしたのだった。

アルゼンチンの気候は日本と真逆になる。日本が夏なら向こうは冬という具合に。夏から冬では大違いだが、今回は日本が春から夏に向かうところで、アルゼンチンは秋から冬に向かうところ。春と秋に大して違いはなく、むしろ日本より湿度はなくカラッとしていて試合をするのにほとんど支障はなかった。試合に影響があったとしたらピッチの状態だったかもしれない。試合を重ねる毎に凸凹になるピッチ状態にどのチームも苦労したのは間違いない。いずれにしても、日本代表については、誰に会っても「残念でしたね」と言われる結果に終わった。C組の日本は初戦のセネガル戦には松木玖生(FC東京)のゴールにより1-0勝ったものの、3日後の第2戦(ラプラタ)は山根陸(横浜F・マリノス)の先制点もむなしく、コロンビアに1-2で逆転負け。第3戦(5月27日・メンドーサ)のイスラエル戦も坂本一彩(ファジアーノ岡山)のゴールで先制しながら、76分、92分に連続ゴールを決められてグループリーグ3位で終え、ラウンド16に進むことができなかった。特にイスラエル戦は68分に相手が退場者を出し、10人に減った後で試合をひっくり返されたから、チームのみならず見ていた人もショックだったことだろう。10人で日本に劇的な逆転勝ちを収め、C組2位でラウンド16に進んだイスラエルは最終的に3位になったから、日本が大会中の成長に手を貸したようなもの。日本がその場所にいても不思議はなかったと今も悔しさが残っている。

振り返ると、このチームは新型コロナウイルスのパンデミックの影響をど真ん中で受けた世代である。渡航が厳しく制限されたために、海外で戦う機会に恵まれず、国際経験を豊富に積むことができなかった。渡航制限が緩和された後、一気に経験不足を取り返そうと、あちこちの大会に参加したが、やはりFIFAの公式戦ともなると相手チームの真剣度が違った。その違いに対応する力が足りなかった感は否めない。特に今回感じたのは〝階級〟の差だった。サッカーは状況に応じて瞬時に判断を変えながら、技術を披露し戦術を遂行する競技。日本の選手にその能力は十分にあったけれど、ボクシングに例えると、日本の選手がライト級だとしたら、グループリーグで戦ったコロンビアや優勝したウルグアイはミドル級の選手で、力強さに差があった。

特に上位に食い込んだチームで舌を巻いたのは中盤の選手のプレッシャーを仕掛ける強さであり、仕掛けられたプレッシャーに対する強さだった。360度、全方位のプレス力というか。日本の選手は前にかける圧力は強くても、プレスバックの力は弱かったりする。育成の段階でつなぎのうまさを重視するあまり、相手のボールをガツガツ刈り取る選手が世に出づらくなっているのではないかと心配になるくらい。現実問題として「次世代の遠藤航(VfBシュツットガルト)は誰だ?」と自問自答してみると、意外に名前が出てこない。強国にはそういう選手がざらにいた。単純にフィジカルが強いだけではなく、うまくて球がさばけて、その上で2度も3度もボールを奪い切りに行ける選手とか、ボールが自分の頭を越えた時にすぐにペナルティーエリア内に走って戻る力のある選手とか……。

ボクシングのたとえを続けると、接近戦に強い選手が強国は多い。相手に強烈なプレスをかけられても自力ではがしてしまう。日本はプレスをかけられると安全第一でパスを選択するけれど、場合によってはかわし切れない時もある。それを引っかけられてショートカウンター食らう。南米やアフリカの選手は、相当厳しい接近戦を仕掛けられても、ぐいと持ち出して逆にはがすことができる。その接近戦に勝つと、視野が大きく開けて攻撃の選択肢は格段に増え、ビッグチャンスを作ることが出来るのである。この大会にはこうした三笘薫が所属するブライトンのカイセド(エクアドル代表)の〝手前〟みたいな選手があちこちにいた。そういうプチ・カイセド、プチ・ワタルみたいな選手はどうやって育つのか。おそらく人形を立てて、パス・アンド・コントロールの練習を火曜日から金曜日までやって、土曜日に試合をする、というような繰り返しでは、接近戦の強さ、はがす力は養えないのかもしれない。ピッチのサイズを工夫して、もっともっとコンタクトの多い状況を育成世代でも設定した方がいいのだろう。

今回のチームにはチェイス・アンリ(VfBシュツットガルト)に髙橋仁胡(FCバルセロナ)、福井太智(FCバイエルン・ミュンヘン)、福田師王(ボルシアMG)と4人の海外組がいた。この世代も国内だけ視察していればいい時代ではなくなったわけだが、この世代の一番のネックは、おしなべて試合の経験値が低いこと。特にGKはそれが顕著。今回は3人中、2人が大学生で1人がJ2の選手だった。試合勘を考慮すると、出場機会に恵まれた大学生の方がおのずと優位になるわけである。今回の大会に参加した全チームのGKの出場機会を調べたらヨーロッパと南米以外の国々は実は日本並みだった。南米とヨーロッパの選手はその所属するクラブからそのレベルにあったクラブにローン移籍をしてそこで出場機会を増やしているのである。どうやったら、アンダーエージのGKが毎週末、試合に出られる環境をつくれるのか。それはフィールドプレーヤーも同じで現在検討を重ねているところだ。いろいろ調査をすると、FC東京やガンバ大阪、セレッソ大阪のU-23チームがJ3で戦った時期が5年ほどあったのが、その世代の強化にかなりつながったという意見を頂戴している。GKなら谷晃生(FCVデンデルEH)、フィールドプレーヤーなら堂安律(SCフライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダ)もJ3で腕を磨いた。刺激を受けた堂安や久保が今や日本の代表に根幹になりつつあることを思うと、Jリーグと相談しながらこの年代の新たな強化策を練る必要性を感じる。

優勝したウルグアイは本当にタフだった。中2日の連戦で7試合目の決勝となると、さすがに足をつる選手が出てきたが、それでも敢然と立ってファイティングポーズを取っていた。聞いたところによると欧州に遠征するとき、20人とか22人とかフルサイズで選ばずに、あえて少ない人数で行って、ほぼ同じ選手たちで2試合連戦をするようなやり方も採り入れているそうだ。そういう厳しい試合がある日常をあえてつくり、フィジカル面やメンタル面も鍛えているらしい。そのウルグアイに決勝で敗れたイタリアは欧州では特異なチームだった。MFの形はダイヤモンド型の4-4-2で、10番をつけたトップ下が典型的なファンタジスタ系で、その選手が相手のプレスをはがすと一気に展望が開け、前の2トップを生かせるサッカーをしていた。

日本がいるC組を首位通過したコロンビアは準々決勝でそのイタリアに敗れた。コロンビアは日本より技術的にも戦術的にも優れていたとは思わない。ただ、フィジカルスキルがすごくて、日本の選手はファウルでも止められなかった。アフリカ人とも違うお尻の大きさを感じた。彼らに接近戦で負ける日本の選手を見ながら、ここでもライト級では世界で通用しないという印象を持ったのは言うまでもない。現在技術委員会におけるフィジカルフィットネスプロジェクトではアンダー世代の適正な身体づくりの指標としてBMI(Body Mass Index)値をあげている。BMI値とは体重と身長から割り出される肥満度を表す体格指数として健康診断でよく取り上げられているものである。その目標値としてGKは23.5、フィールドプレーヤーは23.0としている。今回のU-20日本代表の選手はというとGK3名の平均が23.1、フィールドプレーヤーの平均が22.4であった。育成世代から、しっかり栄養を摂取して、身体の内側から骨を太く丈夫にし、いい筋線維を築いていくことが大事だろう。

SAMURAI BLUEの最新のFIFAランキングは20位で、昨冬のカタールのFIFAワールドカップはベスト8まで紙一重だった。そういう背景があって、どのカテゴリーの日本代表でもグループリーグを突破する力はあると、サッカーファンの皆様には思われている。各カテゴリーの代表の強化を担うインサイダーの我々も、そういう認識でチームづくりをしている。引き上げるべきスタンダードはいろいろあるが、こうしたところにも着目していく必要性を感じている。

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