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まず自らを省みる ~いつも心にリスペクト Vol.124~

2023年09月27日

まず自らを省みる ~いつも心にリスペクト Vol.124~

「試合後のあなたのコメントには逃げがない。敗戦を判定のせいにしたり天候のせいにしたりする監督がとても多いのですが…」

試合前々日に行われた浦和レッズのマチェイ・スコルジャ監督(51歳)の記者会見で、こんな質問をしたのは、浦和のニュース専門の『レッズプレス』で記事を書く佐藤亮太さん。いつもとても人間的で温かみのある質問をするユニークなジャーナリストです。

通常、監督会見では、チームの調子のこと、次の対戦相手のこと、戦術的なことなどが中心になります。監督の話したことは必ず選手たちが読みます。デリケートな質問に答えるときには、細かな表現にも気を遣わなければなりません。しかし佐藤さんの質問はとても毛色が変わっていました。思わずニッコリと笑ったスコルジャ監督は、こう答えました。

「私は完璧な人間ではないし、ナーバス(神経質)になるときもあります。正直、判定に不満を感じることも、不運と思うこともあります。AFCチャンピオンズリーグ決勝戦の4日後にJリーグの試合が行われたときには、試合日程をもう1日延ばしてほしかったと考えました。しかし多くの場合、敗戦や悪い内容の試合のあとでまず考えるのは、私自身にどんなミスがあっただろうかということです。そして記者の皆さんに向かっても、そうしたことを中心に話します。それが『逃げがない』という感想になるのかもしれません」

ポーランド出身のスコルジャ監督は、20年近くになるプロ監督としてのキャリアの大半を祖国のクラブで過ごしてきました。今季浦和の監督に就任するに当たって、「このような美しい文化がある国で仕事ができることをうれしく思っています」と話しています。

スコルジャ監督の話を聞いていつも感じるのは、「謙虚さ」という美質です。ポーランドのサッカーはワールドカップで3位になったこともあり、日本よりずっと豊かな歴史をもっていますが、そうした欧州の強豪国から来たことを誇るのではなく、へりくだって日本という国に敬意をはらう姿勢には、とても好感がもてました。

今季開幕前から、浦和はほぼ毎週スコルジャ監督の会見をオンラインで開催してきました。しかしこの前週の会見では、スコルジャ監督に代わって同じポーランド出身のラファル・ジャナスコーチが出席し、スコルジャ監督と同様、率直に考えを語りました。

ジャナスコーチは、主として攻撃の組み立てを指導しています。海外ではコーチたちがメディアと接するのを嫌う監督が少なくないといいますが、翌週、このことを聞かれたスコルジャ監督は、こんな話をしました。

「これはコーチ陣に対する信頼の証しです。私は一緒に仕事をする全てのコーチを信じています。われわれ(ポーランド)の文化では、普段の働きの見返りとして、メディアの前に出すということをします。それは、彼らに対する私のリスペクトを表すことでもあるのです」

ジャナスコーチによると、分析担当を含めた浦和のコーチ陣は常に自分のアイデアを監督に伝えているそうです。スコルジャ監督からもさまざまな質問が出ます。そしてコーチ陣全員で議論をし、最終的な決断を監督が下すという形になっているそうです。

そうしたプロセスを経て臨む試合が、ときとしてまったく思い通りに進まないこともあります。このスコルジャ監督の会見の2日後、浦和は狙いとする攻撃が出せず、0-0で引き分けました。

「攻撃面で動きが悪く、私自身にとっても少し驚きでした」と、試合後、スコルジャ監督は率直に良いパフォーマンスではなかったことを認めました。その上で原因として口に出したのは、まさに彼らしい言葉でした。

「もしかしたら、この1週間の私の練習の組み立てが悪かったのかもしれません」

周囲をリスペクトし、「謙虚さ」を失わないこの51歳の監督は、これからのサッカー界で大きな業績を残しそうな予感がします。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会機関誌『JFAnews』2023年8月号より転載しています。

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