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【最後の青春ドラマ】あと一歩まで迫った2年時、突然断たれた日本一への道~高校女子選手権・小林里歌子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)後編

2021年12月30日

【最後の青春ドラマ】あと一歩まで迫った2年時、突然断たれた日本一への道~高校女子選手権・小林里歌子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)後編

第30回全日本高等学校女子サッカー選手権大会が2022年1月3日(月)に開幕します。高校日本一を決する大会に出場した選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここでは名門・常盤木学園高校で大会に出場した小林里歌子選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の高校時代のストーリーをお届けします。

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得点を量産していた3年時に突然訪れた悲劇

主力として2年時の全日本高等学校女子サッカー選手権大会に挑んだ小林里歌子。自身の活躍もあり、常盤木学園高校は順調に勝ち進んでいった。

迎えた決勝の相手は、開催地である兵庫県の地元・日ノ本学園高校。ノエビアスタジアム神戸には2300人以上の観衆が集まり、「相手の応援がすごい」という雰囲気の中でキックオフを迎えた。「相手にボールを持たれる時間が長く、厳しい試合だったイメージがあります」という小林の言葉を裏付けるように、常盤木学園は前半をシュート0本に抑えられている。後半終了間際には裏に抜け出した小林のパスから杉原遥波(現アンジュヴィオレ広島)がシュートを放ったものの、ゴールポストを直撃して得点ならず。延長戦でも決着が付かず、PK戦では2-4で敗れた。

全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会(インターハイ)では決勝に進めず、高校女子選手権でも準優勝。悲しみに暮れるチームを救ったのは阿部由晴監督の言葉だった。「めったに褒めない先生だったんですけど、『よくやった』という言葉をみんなに掛けてくれました。それで少しウルっときました」

指揮官の言葉で前向きな姿勢を取り戻した小林は2015年、3年時のシーズンでさらに躍動する。中国で行われたAFC U-19女子選手権では4ゴールを挙げてU-19女子日本代表の優勝に貢献し、大会MVPにも輝いた。常盤木学園が挑んだチャレンジリーグEASTでは13ゴールを挙げて得点王を獲得。副キャプテンを務めた小林は「自分が中心にならなければ、という思いがある中、楽しくやれていた」と、当時の充実ぶりを語る。

好調を維持したまま女子選手権に臨み、悲願の日本一になって高校生活を終える――小林のそんな願いは、大会に挑むことすら許されないまま突然、断ち切られた。9月30日、宮城県代表の一員として出場していた国民体育大会の試合で、膝の前十字靭帯断裂という大けがを負ってしまったのである。

「けがをした瞬間は打撲だと思った」というが、検査後に伝えられた最悪の結果。「これでもう高校サッカーは終わりなんだ」という絶望感に襲われた。

最後まで仲間と戦い抜くもまさかの2回戦敗退

大エースの離脱はチームにも動揺をもたらした。「自分はそんなに暗い雰囲気を出さないようにしていたんですけど、泣いていたチームメートもいましたし、みんなすごく気を遣ってくれていました」と小林。「女子選手権は無理か?」と尋ねたという阿部監督の言葉からも、彼女抜きに大会に挑むことの難しさが読み取れた。

それでも、小林はチームと共に戦うことを決意し、できることを黙々とこなした。練習グラウンドが学校の敷地から離れた場所にあり、リハビリ組は校内でリハビリトレーニングを行うという部内の決まりがあったため練習を見守ることはできなかったが、試合には帯同し、アドバイスを送ったり、相手の分析を行ったりしたという。

迎えた女子選手権の第24回大会、小林は阿部監督の計らいでベンチに入り、選手たちと一緒に戦った。初戦の相手は前回大会決勝で敗れた日ノ本学園。「みんな気合が入っていて、特に初戦はすべてを出し切るようなプレーを見ることができた」と小林が回顧するように、常盤木学園は1-0でライバルとの激戦を制した。

しかし、その勢いは持続できなかった。続く2回戦は、常葉学園橘高校(現・常葉大学附属橘高校)にPK戦の末に敗北。まさかの2回戦敗退となったのである。

当時の常盤木学園は「優勝するのが当たり前、という感じのチーム」だった。小林をはじめ、選手たちは「無冠では終われない」という強い思いを胸に女子選手権に挑んでいた。エースの小林を欠いていたとはいえ、2回戦敗退は誰も予想していなかった結末だ。小林は試合後の心境をこう振り返る。

「負けた後はみんな泣いていましたし、『やばい』という言葉しか出てこなかった。監督が何を言ったのかも覚えていないです。『里歌子のために戦う』と言ってくれた選手もいたので、仲間たちが泣いている姿を見るのは苦しかったですね」

1年時で参加した際は「みんながどういう思いで臨んでいるのかよく分かっていなかった」という女子選手権。3年間でその思いも大きく変化したようだ。

「一緒に生活してきた仲間と戦える最後の機会という意味ではすごく思い出に残る大会ですし、1日でも長く戦っていたい、という思いがありました。自分のサッカー人生の中でも、すごく思い出に残る大会でした」

1年時から主力を務め、2年時、3年時には各大会で得点を量産し、年代別代表では世界一にも輝いた。一方で女子選手権では頂点に立つことができず、3年時には大けがも経験した。喜びばかりでなく、苦しみも味わった高校生活だが、小林は「すべて意味があるものだった」と断言する。

「実家を離れて寮生活をしたこともそうですし、何より本当に長い時間を過ごした仲間とは深い絆ができました。選手が主体的に考えるサッカーもできて、人間力を高められたと思っています」

第30回全日本高等学校女子サッカー選手権大会

大会期間:2022年1月3日(月)~2022年1月9日(日)
大会会場:三木総合防災公園(兵庫県三木市)、五色台運動公園(兵庫県洲本市)、いぶきの森球技場(兵庫県神戸市)、ノエビアスタジアム神戸(兵庫県神戸市)

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