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ウェルフェアオフィサー活動の充実 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.103~

2021年07月29日

ウェルフェアオフィサー活動の充実 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.103~

ウェルフェア(Welfare)とは、幸福、快適な生活、福利を意味する。「ウェルフェアオフィサー」は、サッカーを楽しむサッカーファミリ―の安心・安全を守り、より快適なサッカー環境を構築する役目を担う。好ましくない行動に対して懲戒罰を与えるのではなく、仲間に気付きを伝えることで、誰もが安心してサッカーを楽しめる環境づくりを推進する担い手だ。

オン・ザ・ピッチのみならず、オフ・ザ・ピッチでもリスペクトの精神が広がり、サッカーのフィールドから日常生活まで浸透していくと良いと考えている。すでに各都道府県サッカー協会には、ウェルフェアオフィサー(ジェネラル)が配置されており、ウェルフェア推進のためにさまざまな活動をしていただいている。

JFAリスペクト・フェアプレー委員会では、2021年に取り組む重点事項の一つとして「ウェルフェアオフィサー活動の充実」を掲げている。今回、リスペクトの精神を広めていただける仲間が増えたので紹介していく。

1つ目はWEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)の取り組みだ。WEリーグには、WEリーグ理念推進部があり、リーグのビジョンの一つである「世界一のリーグ価値を」を実現する一環として、所属全クラブにウェルフェアオフィサーを設置することが決定した。

2021年3月30日、WEリーグおよびWEリーグの所属クラブに向けたウェルフェアオフィサー研修会をオンラインで開催した。リーグ事務局および所属クラブから22名の方に参加いただき、リスペクトの基本的な理解やクラブ・ウェルフェアオフィサーに関わることを中心とした内容で行われた。

研修会でのディスカッションパートでは、特に女子チームで起こりそうな問題を事例とし、女子選手との関わりの中で想定される安心・安全に関わることや、ハラスメントなどの具体的な事例を用いながら、ウェルフェアに関する学びと関心を深めていただいた。参加者の熱心なディスカッションを聞きながら、今後、クラブ・ウェルフェアオフィサーの活動がクラブ内でしっかりと機能していくことで、各チームにおいてさらに環境整備が進められると感じた。

9月に開幕するWEリーグは11チームの構成で、毎節1チームは試合のないチームがある。試合のないチームは、リーグの理念に基づく活動を進める計画があると聞いている。ピッチ内外を問わず、関わる人たちの生き生きとした姿を通じて、サッカー界全体にポジティブな風を吹かせてくれると期待したい。

2つ目は、JFAコーチを対象としたウェルフェアオフィサー(ジェネラル)の研修会だ。4月20日に千葉県・JFA夢フィールドにて行われたJFAコーチ女子担当者研修会の中の一コマとして、ウェルフェアオフィサーについての研修会を開催した。JFAコーチとしてウェルフェアオフィサーについての研修会を取り入れていただいたのは初めてとのこと。すでに各種大会などでマッチ・ウェルフェアオフィサーとして経験豊富なコーチもいるが、あらためて、ウェルフェアオフィサーについて学ぶ機会を持っていただくことで、さらに理解を深めていただくこととなった。

こちらでもディスカッションは行われたが、女子チームや小学生のチームを事例としたシナリオ以外に、マッチ・ウェルフェアオフィサーについてのディスカッションも行った。マッチ・ウェルフェアオフィサーとして活動をする際、試合の前後に各チームの指導者とコミュニケーションをとる。その時々の立場はさまざまであったとしても、基本は人と人とのコミュニケーション。試合前のあいさつや、試合後に声を掛けるタイミングなど、相手の立場を理解した上での配慮もうかがうことができた。声を掛けるタイミングや言葉の選択を誤ると、適切な気付きであったとしても、相手の心に届かないこともある。上から目線の言動ではなく、いかに同じ指導者仲間として気付きが届けられるかは大事なポイントだ。

さまざまな場所で活動をするJFAコーチたちが、技術的なことだけではなく、選手たちがさらに生き生きと活動できる環境を広めていくこととなる。より現場に近いコーチたちが、リスペクトの伝道師となって推進していただけることはとても心強い。

2021年、今回の新たな仲間と共にリスペクト精神を広め、より多くの理解者を増やしていくことで、サッカー環境をより良いものにしていきたい。

【報告者】山岸佐知子(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2021年5月号より転載しています。

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