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シフトチェンジ ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第4回~

2020年12月11日

シフトチェンジ ~技術委員長 反町康治「サッカーを語ろう」第4回~

コロナ禍で中止を余儀なくされた代表の活動が12月に入り、いっぺんに再開した。サムライブルーを除く、ほぼすべてのカテゴリーの代表チームが入れ代わり立ち代わり高円宮記念JFA夢フィールド(千葉・幕張)にやってきて、施設をフル活用している。そんな活況を見るにつけ、夢フィールドのような優先的に使える場所が我々にあることのありがたみを、つくづく感じている。

日本サッカー協会(JFA)が12月4日から3日間の日程で行った「JFAストライカーキャンプ」もその一つ。夢フィールドに集まったのは4日だけで、5日には静岡県御殿場の時之栖に移動したけれど、集合日に新型コロナウイルスをチェックするSmartAmp法検査を参加者全員に施し、スムーズかつ安全にキャンプを行うことができた。今回のストライカーキャンプには北は北海道から南は九州のクラブまで、ジュニアユースに所属する16人の少年が集まった。学年でいえば、中学の1、2年生。全国のトレセンコーチから推薦されたFWの金の卵たちだった。サッカーの試合では敗れた側が敗因として「決めるべきところで決められなかった」とよく語るけれど、「決めるべきところで決められる選手」というのは、ブラジルやアルゼンチンならともかく、指をくわえて待っていれば、この世に現れるものではない。ストライカー養成の難しさは承知の上でJFAとしてはシフトチェンジというか、グラスルーツを広げながら金の卵を発掘し孵化させる活動に積極的にチャレンジしていくことにした。

実は2003年から2006年の4年間にもストライカーキャンプを張ったことがある。当時はGKキャンプとセットで行い、特別コーチとして釜本邦茂さん、吉田弘さん、永島昭浩さん、福田正博さん、黒崎久志さん、長谷川祥之さんら日本リーグ、Jリーグでその名をとどろかせたストライカーが参加してくれた。指導を受けた側から清武弘嗣(C大阪)、川又堅碁(千葉)、大迫勇也(ブレーメン)、小川慶治朗(神戸)、宮吉拓実(京都)、宮市亮(ザンクトパウリ)といった選手が巣立っている。今回はFWだけを集めてトレーニングし、GKは時之栖で活動中のJFAアカデミー福島の選手が務めてくれた。指導には池内豊・JFAユース育成ダイレクターをトップに、JFAのナショナルトレセンコーチが当たった。黒崎久志・JFAナショナルトレセンコーチは前回も今回も参加した唯一の人間ということになる。

今回のキャンプは実戦練習の他に座学のイメージワークもあり、岡崎慎司(ウエスカ)、大迫勇也、南野拓実(リバプール)がビデオメッセージを寄せてくれた。前途ある少年たちのために一肌脱いでくれたサムライブルーの面々には感謝しかない。ストライカーキャンプは来年も2回ほど計画しており、いずれはオフシーズンに日本に戻ってくる海外組に特別参加してもらえたらと考えている。実現したらビデオよりもさらに少年たちに伝えられるものがあるだろう。

一口にストライカー養成といっても、一夕一朝にいかないことは分かっている。今の時代のストライカーは右足、左足、頭でもシュートを決められないと話にならない。守備にも精勤しなければならない。我々が指導された頃のように「ボールを見て」「ゴールを見て」「またボールを見てから打つ」というような手順を踏める時間的な余裕もない。監督による考え方の違いもある。ユベントスの監督だったマルチェロ・リッピは「シュートは逆サイドに打つ」ことをチームの決め事にしていたと聞く。その方がGKのはじいたボールやポストの跳ね返りを2次攻撃につなげやすいからだ。ストライカー自身の個性の違いもある。ブラジルの「王様」ペレは逆サイドに低くと、GKの肩口を抜いてゴールネットの天井に突き刺すようなシュートの2パターンを武器にした。「爆撃機」と呼ばれたドイツのゲルト・ミュラーはGKもゴールも見ずに、イメージだけでシュートを転がして入れることができた。ペナルティーエリア内だけで異能を発揮するミュラーのような点取り屋に、遠めから打つシュートを練習させてもほとんど意味はない。

ただ、共通していえることは、シュートの精度はこつこつと練習して身につけるしかないということだ。サムライブルーのアタッカーたちもシュート練習を日課にしている。10月のオランダ合宿、11月のオーストリア合宿でも大迫や南野、久保建英(ビリャレアル)らはチーム練習の後、居残りでシュート練習を毎日やっていた。私も時々、球拾いでお付き合いしたが、彼らはオーバートレーニングを心配したフィジカルコーチが止めに入るまで、シュートを打ち続ける。プロでもそうなのだから、育成年代の選手が地道にシュート練習に取り組むのは当然だろう。

中学生というと、これから大きく心身ともに変化する年代である。FWだと思った選手が高校生になったらCBになっていたり、その逆のケースも起きたりする。将来のことはなかなか見通せないが、伸び悩みの壁にぶつかりがちなポストゴールデンエージの少年たちに同年代のライバルを意識する機会を与え、コーチや先輩からも刺激を受けながら、大志を育んでもらうのは大切なことだと思っている。

こういうポジション別のプロジェクトはGKが1998年からやっている。それだけ年数を重ねると指導内容も整理されて、その成果が出てきたと特に今季のJリーグを見ていると感じる。U-23の東京五輪世代で大迫啓介(広島)に続いて沖悠哉(鹿島)、谷晃生(湘南)、梅田透吾(清水)、オビ・パウエル・オビンナ(横浜FM)らがチャンスをつかんで活躍するようになってきた。U-19を見ても鈴木彩艶(浦和)、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)のような将来が楽しみなタレントがいる。

GKに関しては明らかにプロジェクトがプラスに働いてきている。今年からは、オランダ人のフランス・フックさんというアヤックスやFCバルセロナでも指導経験がある名伯楽の尽力があるのだが、それについて語ることは、また別の機会に譲るとして、ストライカーの方もプロジェクトを継続して行うことで、参加者から将来の日本を先頭で引っ張るような、負ける度に「ストライカー不足」と評価される悔しさを晴らすような選手が出てくることを期待している。そのためにはプログラムの中身を充実させていく責任がこちらにはあると思っている。

将来を見据えた布石という意味では、来年度に新設する「フィジカルフィットネスライセンス」もそうだ。通常のコーチ資格を持つ指導者にフィジカルに関する正しい知識を付加価値的に身につけてもらうのが狙い。来年まずは「フィジカルC級養成講習会」を開講し、4日間でライセンスを取得してもらう。22年以降、B級、A級と順を追って発展させていく予定だ。こちらも日本の選手が世界と肩を並べて戦うために必要なことだと考えてのこと。特に育成年代の指導者が正しいフィジカルトレーニングの知識を持つことは障害予防につながるし、選手の土台づくりに大いに役立つと思っている。

日本では新設になるが、そもそもAFC主催の大会でフィジカルコーチがベンチ入りするにはラインセンスが必要というルールがある。ブラジルはフィジカルコーチ出身の監督が多いことで知られ、鹿島や浦和で指揮を執ったオズワルド・オリベイラもそうだった。ペップ・グアルディオラ監督に率いられたマンチェスター・シティー、今季の欧州チャンピオンに輝いたバイエルン・ミュンヘンのサッカーを見れば、走力とパワーが半端ないレベルで要求されていることがわかる。リバプールしかり。ゲームの中で、選手にとって、フィジカルフィットネスの重要性は高まるばかり。

一方で、日本サッカーはこれまで、フィジカルの弱さを前提に独自性を追求しようという論が有力だった。言葉は悪いかもしれないが、フィジカルの能力を上げることをないがしろにしてきた感もある。しかし、本当に「デュエル」を避けてパスを素早く回すだけで相手に勝てるのかといえば、やはり難しい。フィジカルの弱さは日本がFIFAワールドカップでベスト16の壁を乗り越えられない一因だと個人的には思っている。だからこそ、ここでも弱点に対して真正面から取り組む、そういうシフトチェンジが必要に思えるのである。

いい見本がある。遠藤航(シュツットガルト)だ。湘南の監督時代に私はユースにいた遠藤をJリーグのピッチに立たせたが、当時から背は高くないけれど人に強いところがあった。その資質を伸ばし、ブンデスリーガの大男に交ざった今もしっかり戦えている。組織としてハードワークができ、個では俊敏で器用な日本の選手が、強さを身につけデュエルでも引けをとらないようになれば、もっともっと世界で上に行けるはず。そのためには育成年代から正しくフィジカルを鍛えられる指導者を増やす必要がある。成長期に何をするべきか、体育の授業で習う程度の知識だけではもはや追いつかないだろう。

10年後、こうあってほしいと願う未来から逆算し、先を見据えて今から足りないものを埋めていく。必要と思えるものを施策に落とし込む。明日強くするための施策と10年後を考えた施策は違う。後者はたいてい地味なもの。しかし、その水滴が石を穿つことがあることを読者の皆さんにはご理解いただきたい。

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