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リスペクトの心を培うことが何より必要 ~いつも心にリスペクト Vol.62~

2018年07月20日

リスペクトの心を培うことが何より必要 ~いつも心にリスペクト Vol.62~

「スポーツにはそれぞれ『お家柄』がある」

サッカージャーナリストとして私の「師」にあたる牛木素吉郎さんの言葉です。それぞれの競技にはそれぞれの歴史や文化、そしてそれに基づくルールがあり、他競技の尺度で良い悪いを言うのは間違っているということです。

私はアメリカン・フットボールに関しては完全に素人です。軽々に批判するのは、この競技にかけて生きている人びとへのリスペクトに欠ける行為だと考えています。しかし5月に起こった大学の交流戦での「反則タックル」は、競技の違いを超えて許されない行為であると考えています。

プレーが終わって数秒してから、しかも相手の背後から巨漢がタックルしたら、ときには命にかかわる大けがになるでしょう。下半身不随などの不幸なことになる危険性も十分ありました。スポーツとしてあってはならないことです。

この反則に関し、監督の指示があったとも言われていますが、大学生の一流スポーツマンであるはずの当該選手が監督に言われたからと言ってこれほどの乱暴を働くというのは理解を超えています。

今回の事件のニュースを追いながら、いまさらながらに「リスペクト教育」の大切さを思わずにいられませんでした。少年のころから「相手チーム選手もいっしょにサッカーを楽しむ仲間」という意識があれば、「潰してこい」と監督から言われても、「監督、僕はルールの範囲内で相手を止めます」と言えたのではないでしょうか。

1980年代にブラジルで取材していたときに、グレミオという強豪クラブの「3軍」(20歳以下)の試合を見る機会がありました。当時のブラジルでは、プロ同士の試合の前座として、同じカードの3軍同士の試合が行われる形が一般的でした。この時間ではまだたくさんの観客が入っているわけではありませんが、観客の前でのプレーに慣れることはプロになる上で大事なことだからです。

監督の特別な厚意で、私は試合前のロッカールームに入ることを許されました。地方のクラブのスタジアム。プロ用ではない3軍用のロッカールームは、薄暗く、がらんとしていました。しかし試合直前、監督が手短かに最後の指示を出し、選手たちを鼓舞すると、ぴりりと張り詰めた雰囲気になりました。

最後にチーム全員で円陣を組むと、キャプテンが短く話し、みんなで神に祈ります。その話は、驚くべきものでした。

「いまここで神様に祈っているのは、ぼくらの勝利のためにではない。今日この試合で、僕らも、相手選手たちも、誰もけがをしないために祈ろう」

長い取材生活の中でも、忘れることのできない、最も美しい言葉でした。

3軍の選手たちは、プロに上がれるかどうかの瀬戸際にいます。良いパフォーマンスを見せられなければ、この試合を最後にクラブから放り出されてしまう選手もいるでしょう。まさに「生存競争」と言っていい試合前に、彼らは毎試合こうした祈りを交わしてピッチに出ていくのです。

私が監督をしている女子クラブは、毎年新年の初練習が終わると最寄りの神社にお願いして「お祓い」をしてもらっています。10年ほど前、試合ごとにひざの靱帯を切るなどの大けがが続きました。きちんと準備し、試合に臨んでも、サッカーではけがから逃れられないときもあります。

「お祓い」に行くようになったのは、その翌年からでした。初練習を終わって神社に移動する前に、私は毎年こんな話をします。

「サッカークラブだけれど、必勝祈願に行くわけではない。チームの誰もが、みんなの家族が、そして相手チーム、私たちの試合を担当してくれるレフェリーたち、さらには協会の役員の人たちも、けがをしないように、病気をせずに1年間を過ごせるように、お祓いをしてもらいます」

今回のアメリカン・フットボールの出来事を見て、あらためて「リスペクト」の大切さを思わずにいられません。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会機関誌『JFAnews』2018年6月号より転載しています。

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